徹底検証 日清・日露戦争 (文春新書828 本体830円)
カットされ雑誌に掲載
記録のすべて速記から一冊に
09年の秋も深いころ、文春臨時増刊「坂の上の雲」と司馬遼太郎のために、2日にわたる長い座談会を行なった。12月刊行された雑誌には、残念なことに半分以上カットされて掲載となったが、文春新書編集部がもったいないと記録のすべて速記から活かし一冊にする企画をたてた。まとめられたものを読み直し、もう一度世に問うだけの価値があると喜ばしく思った。以上、半藤一利による初めにひと言のくだり。権威5人の白熱議論20時間。中国とロシアがいまだ日清・日露戦争の無念を晴らそうと、尖閣や北方領土をたてに日本の泣きどころを突いてくる。日清118年、日露戦争から108年数えるが、3、4代にわたり語り継がれた無念のきわみ。晴らすまで消えそうにない。それは、1600年関ヶ原で敗れ潰走した薩長土肥が、267年後維新に成功。無念を晴らした経緯と同じ。日本人の方がしつこいかもしれない。このため、勝ちいくさで都合の悪いところをカットしたり、粉飾した場面を巻き戻し。従軍戦記として事実、真実に迫る当時の肝腎なシーンを再現。5人ともつぶさに見てきたような話しぶりが面白い。後世伝えられる美談がつくり話であることもよくわかる。