証券ビュー

森羅万象

印尼動向 三重騒の飛び火警戒 (2020.03.17)

近年また経常赤字が拡大しているインドネシアは、ヘッジファンドなどの
標的になりやすく、通貨ルピアが2018年後半にかけて下落したのは要注意。
1997年のアジア通貨危機においても問題の中核新興国であったのがインドネシア。
米中新冷戦の中で米中双方のサプライチェーンにインドネシアが深く組み込まれて
いる状況において、「需要ショック」「供給ショック」「金融ショック」の
「トリプルショック」についてコロナショックを引き金とした新たな危機の震源地
となる懸念がある。
      
アジア通貨危機の際に周辺国が陥った経済危機へのプロセスを単純化すると、
新興国からの資金流出→銀行危機→信用収縮→流動性危機→経済危機」だった。
ヘッジファンドの標的になったことを契機として現地通貨の為替レートが大幅に切り下がり、
米ドル建て債務の実質的な負担が増大、同時に海外の投資家が資金を引き揚げたことから
地場銀行が資金調達難となり企業は信用収縮を受けて資金繰り難に陥ったのだが、
市場全体の流動性が枯渇したことも重なり合って経済危機へと突入していった。  
      
再現の気懸りは、米CDCの策定したパンデミック対策で採用しているフェーズに
治療法が確立するまでできるだけ流行のピークを「引き伸ばす」というピーク遅延理論があり、
コロナショックは感染拡大が収束するには時間を要することがほぼ確定。
            
タイから発火したアジア通貨危機はマレーシア、インドネシア、フィリピン、韓国などに飛び火。
インドネシアがIMF支援を受ける直前に、同じイスラム教の産油国に支援を求めたところ
地政学的なパワーバランスが崩れることを怖れた米政府高官が急遽ジャカルタ入り。
その後IMFからの支援が決まりタイ、インドネシア、韓国はIMF管理下に入るという厳しい展開。
1998年にはジャカルタで勃発した暴動では華僑系経営人がシンガポールへ逃避したり
暴動時の脱出用にヘリコプターも追加購入している中、ジャカルタ発シンガポール行きの
シンガポール航空子会社シルクエア便が墜落している。
当時ジャカルタの華僑ビジネスマンの間ではテロではないかとの噂が流れたそうだ。
            
緊縮財政を取っていたタイミングとも重なった日本も対岸の火事ではなく
アジア向け貸出債権が不良債権化し保有や担保の対象である各種資産価格も下落。
金融機関のバランスシート(B/S)もかなり棄損した翌1998年には金融危機が、
10月長銀に12月日債銀国有化など至るにまで深刻化した。