証券ビュー

森羅万象

兵力温存 玉回転一巡を待つ (2019.03.13)

昭和の風林史(昭和五八年三月一日掲載分) 
小豆売り方劣勢声もなし
小豆は買い玉回転、売り玉の煎れ。
環境買い方に味方。
劣勢売り方、声もなし。
久々で小豆の商いが
大阪あたり大豆を上回った(月曜前2節)。
東京も
売り店中食が数日来手詰めている。
いわば小型の煎れ相場だ。
大台三ツ変わりや連続陽線など、
買っている相場師は自信をつける。
見渡せば野も山も春、そして皆強気。
さあこれから小豆の時代がくる。
三万円指呼の間。そのようなムードである。
この時、弱気は言うべき言葉なく
資力続かぬ者は踏み、
資力あるものは両建て、
なすすべ知らぬものは神に祈る。
当局の輸入の絞り込み政策と
ホクレンの出荷調整。
これに相場師のテクニックが
うまく噛み合って売り玉を包囲した。
弱気(売り方)は負けであるから、
相場に逆らう時でない。
さわらぬ小豆にたたりなし。
売るから相場を高くする。
泣く子と地頭に勝てぬ。
なりふりかまわぬ踏みと
ホクレン出荷調整にも勝てん。
もう一ツ。
春の需要期と逆ザヤには勝てん。
しかし、
踏むのは嫌だという人もおれば、
買う気もないという人もある。
仕方ないから追証を積んで
世の変化を待つのみ。
気やすめを言うわけではないが
春の相場は大きくならないものだ。
仮需要(人気買い)一巡と
煎れ一巡を待つだけの辛抱力があれば、
もう一度この相場は安値を取りにくる
(だからと今、相場に逆らうことは
兵力の温存に反するし、
劣勢での攻撃は、利敵行為、
火に油を注ぎにいくようなもの)。
アイ・シャル・リターン(私は帰ってくる)
と相場はいう。
アイ・ハブ・リターンド(私は帰ってきた)
という時がこよう。
輸入大豆は三~四月に
ひと相場ありそうな雲行きだ。
輸大市場は弱気ばかりが目につく。
●編集部註
相場とは関係ないが83年3月1日に
文芸評論家の小林秀雄が亡くなっている。
享年80歳。
 編集者として
今も続く文芸雑誌「文學界」の発刊に携わり、
彼の著作である「本居宣長」
「無常といふ事」「考えるヒント」
等を
学生時代に読書感想文で読まされた人も多い筈。
正直、それが筆者のトラウマになる。
何を言っているのか
サッパリ解らなかったのだ。
 小林の存在がトラウマであった人物に
隆慶一郎がいる。
本名、池田一朗。
中央大学助教授にして脚本家

そして小林の弟子。
彼の存命中、
怖くて小説が書けなかったという。
 小林の死の翌年、
隆が「吉原御免状」でデビューした時、
彼は還暦を過ぎていた。
しかしこの作品で
いきなり直木賞候補になるなど、
時代小説に新風を巻き起こした。