売りに行くと掴まるが 触れなば落ちん風情 (2019.03.08)
昭和の風林史(昭和五八年二月二五日掲載分)
小豆触れなば落ちん風情
日柄食い過ぎた小豆相場は
売りに行くと掴まるが
触れなば落ちんという風情だった。
小豆相場は
農協集荷の管理相場だから、
下がるはずがないのに
値段が消えるところが、
やはり相場は相場である。
産地の現物事情に精通している人達は、
二万九千五百円から三万円相場は
絶対と信じている。
しかし、相場はくたびれた感じだ。
これは節足新値25手。
引け足新値8手、日足九段上げ
という定期相場の日柄食いが、
薄商いの相場の上に出ているからだ。
理屈や材料がそうあっても、
大衆筋が白らけて無関心では
人気にならん。
玄人筋が皆強気で、
上に行かんならん相場でも
腹一杯買っては、回転が止まり
と掴まった玉が泣きだす。
実需がそっぽを向いている時に、
値段を吊っても、
それはホクレンや農協の思い上がりで、
実需筋は買わない権利を行使する。
マバラ大衆二枚三枚、二枚三枚の
売り集団も煎れない権利を持っている。
『16日のあの高値の日足線は、
放れ星、捨て子ですね』と
ご婦人の投機家から電話があって、
ほほう、相当のプロだなと感心した。
要するに薄商いを
鳥なき里のコウモリみたいに、
A店で買い煽りB店で売り抜けて
小さな小さな煎れを取ろうとする
スキャルパーの手の内を
セリを聞いている人は皆知っていて、
知らぬは先生ばかりだから困る。
小豆には近寄るなと書いたら
東穀協会事務局の町田さん
『それはないでしょう』と。
確かに、それはないのです。
大穀協会乙部さんが
小豆市場振興の
切り餅入りトモエの
ぜんざい2分でOKを三袋くれた。
セールス二千人五コの計算
一万コ百万円を配給して、
小豆市場の振興にかける心意気を感じ、
小豆の記事も精を出さねばならない。
さりとてこの小豆を買えとはいえない。
どちらかと申せば、
触れなば落ちんが如き風情。
●編集部註
この当時の相場とそれを巡る攻防戦を、
活字プロレスならぬ〝活字取引〟で
風林火山がせっかく熱く語ってくれているのに、
「切り餅入りトモエのぜんざい2分でOK」
の方が物凄く気になるのは、
これを書いているのがお昼直前であるという事と、
筆者自身の食い意地が張っているためである。
恐らく江戸の昔からある
〝懐中汁粉〟の類であろう。
これは熱湯を注ぎ汁粉にする最中のようなもので、老舗和菓子屋では今も定番商品である。
しかし、ネットで色々調べても、
ぜんざいの作り方や甘味処が羅列されるばかり―。
もう、会社自体がないのだろう。