昭和の風林史(昭和五八年二月十八日掲載分)
閑散に売りなしというが
豆腐が一、〇〇〇円になる日(実業之日本・九八〇円)
という本は参考になる。
高いと買いたい、安いと売りたい、
動かねば判らない。
これが相場である。
これでは儲からないが、
これでないと取れない相場もある。
その区別が難かしい。
絶対の絶―と。
たとえば
セールスマンが言ってくる。
あるいは相場巧者の事情通が
教えてくれる。
たいがい、相場はそうならず
逆になるものだ。
早耳の早倒れ。
あるいは
相場は人気の裏を行くから
困ったものだ。
人気の裏を行く
と思って
そちらのほうを押さえたら、
人気通りまともに行ったり。
輸入大豆相場は
大底が入っていると思う。
しかし
弱気している人は思わない。
これは、
随分あとからになってみないと
判らない。
中国大豆の圧迫。
これにおびえている。
売り方は中豆が命綱である。
世の中、
あてごとと越中褌は
前からはずれる。
叩き材料の中豆の
あてがはずれた時が怖い。
ある読者、えらい元気がない。
『おとうちゃんは、
調子のよい時は、
毎晩お酒ばっかり飲んできて、
利食いしたお金は、
ちっとも持って帰らず、
玉ばかりふやして。
それで曲がったら借金走りまわり、
今度はやけ酒ばかりで』
家内に
きつう説教されたんですと。
気にしない気にしない、
よくある事です。
いままでは、
そうも思わなかったのですが、
やはり年ですかな―と。
相場全般、
なんとなく不透明になって
儲けにくい空模様のようだ。
春の海ひねもす
のたりのたりかなで
気長にいきましょう
というしかない。
乾繭は
あの高いところ掴んじゃった。
砂糖は回転してたが、
これも捉まった。
小豆は売り上がって、
きついところ。
輸大は
水風呂からあがれない―。
だからそんな渋い顔ですか。
●編集部註
こおいう世界に長年いると、
冒頭の文章の逆で
高いと売りたい、安いと買いたい、
となる。
では、実際に儲かっているのか
というとそんなに儲かっていない。
参入タイミングが
遅すぎたり早すぎたり、
損切りが早かったりするのだ。
所詮、この世は住みにくいし、
相場は難しい。
豆腐一丁1000円は
大外れである。
平成も終わろうとしている現在、
ちゃんと作ると2万円だ。
国産でちゃんと作って、
しかもスーパーや百貨店で
流通している高級品だと
400~500円。
逆に大手スーパーの
特売品は50円くらい。
食べ比べると判る。
50円の方は白色無味の
柔らかい塊だ。
その柔塊豆腐コスプレさえ
最近値上がりしており、
今がスタグフレーションである事を
実感する。