証券ビュー

森羅万象

火薬庫 たまったものでない (2018.10.24)

昭和の風林史(昭和五七年九月二十八日掲載分)
輸大期近は利食い千人力
小豆は
秋底入るまで買っても駄目だと思う。
輸大は利食い専一。生糸は重い相場。
輸入大豆が予定のコースで
暴騰納会した。
火薬庫の10月限に火がついている。
生糸のほうは
大量現受けを冷静に判断すると、
相場的には悪い―
と考えるのが当然である。
いうなれば生糸の買い仕手は、
大の字に寝てしまった自分の
蒲団(ふとん)を
持ち上げようとする格好だ。
ただ一ツの気やすめは
来年二月、三月頃になれば
需給が締まるという希望的観測。
しかしこれとて、鬼の笑う来年の話だ。
それより定評のある栗田氏の
〝需給の読み違い〟に気づかず
今の買い方は精神的支柱に
遠い先の需給観を頼りにする。
栗田氏は需給の読み違いでした―
で済むかもしれないが、
巨額な資本を投下し
金利・倉敷の時計に針に
身を刻まれる側は、
たまったものでない。
小豆は納会がないということは、
まるで褌を締めていないみたいなもの。
それでも、下に行きたくないから
戻してみようと、
ただそれだけの動き。
下値は次期枠の絞り込みで抵抗。
上値は今の相場にエネルギーがないため
買い妙味なし。
ここのところ
薄商い続きと相場妙味なしで、
他商品(輸大、生糸、ゴム、精糖)に
関心が移っている。
まして小豆は天候相場が終わって
需給相場に移る。
これが秋底入れての相場なら
強気もよいが
決して底が入ったと思えない。
いわば上げ底である。
二万九千円を割らねば買っても駄目である。
●編集部註
栗田氏とは誰なのか?
 インターネットが
これだけ普及している平成の御代でも
あまり情報が出てこない。
ただ
鍋島高明氏の著作等から見て、
どうやら栗田嘉記氏である可能性が
高いと思われる。
 以前、
板崎喜内人氏の事を当欄で書いた。
板崎氏が桑名筋と呼ばれていたのに対し、
栗田氏は静岡筋と呼ばれていた。
板崎氏と同じくノンフィクション作家、
沢木耕太郎のインタビューを受け、
その模様は「鼠たちの祭り
という作品で読む事が出来る。
これは新潮文庫から出ている
ルポルタージュ集「人の砂漠」に
収録されている。
 手元の情報を総合すると、
浮き沈みの激しい相場師であったらしい。
1972年に1週間で
50憶負けたという伝説も残っている。
沢木氏のルポでも、50億儲けた後に、
61憶負けた件が話題に上っていた。
その際のやり取りの一部は、
鍋島氏の
「マムシの本忠」(パンローリング)
の中でも引用されており、
この作品の裏側にも触れられている。