昭和の風林史(昭和五七年八月二七日掲載分)
いい球くるのを待つ気持
三万円の抵抗とはいえ、
相場の流れは下降トレンドに
乗ったままの小豆である。
台風13号の進路を気にした小豆相場だった。
しかし、相場そのものはぬるい。
俗にいう「金屋筋」が
小豆の売り玉を手仕舞っていたが、
その割りに値が締まらない。
ひところは大量売りの「金屋筋」を
締めあげるのだ―と
強気筋は狙いをつけていたが、
敵前悠々の手仕舞いは、
買い方がなめられているというよりは、
相場環境が、よくよく悪い。
〝七色のパッチ〟神戸のK氏と
麦酒を飲んでいて
『北海道は一日好天即ち二万俵増収。
五日続いて十万俵ふえる。
九分作がいわれていたが、
十一分作を通り過ぎて十三分作』と。
Kさんの手は、とにかく早い。
だから、その強弱変身は
デジタル時計の秒刻みで玉虫色に輝き
千丁動く相場を七回変身するから、
なかなかついていけない。
トレンドとしては
台風13号にかかわらず
下降帯に乗っている。
仮りに台風の影響で買われたとしても、
基調を転換する力はない。
輸入大豆のほうは、
阪神の藤田平が
「いい球を待てるようになった」
という言葉が口から出るようになってから、
外角は流し、内角は引っ張り、
フォームが実に綺麗になった。
要するに無理がない。
なにげない動作が
ファインプレーにつながる。
この無理のなさが
今の輸大の強気に必要な要素である。
いい球を待てるということは、
それだけ力がつかなければならない。
新規売りも出れば利食いも入る。
目先押したからといって
基調が変化したわけでない。
輸大は底打ち出直りの緒についたばかりだ。
いい球がくるのを待つ気持である。
●編集部註
当欄を担当していると、
昭和57年の記述と平成30年の出来事が
奇妙にリンクしていると感じる時が
多々ある。
昭和57年のこの頃も異常気象、
特に台風などによる雨に悩まされた。
平成30年9月4~5日にかけて、
過去最大級とされた台風21号は、
徳島に上陸し、神戸に再上陸し、
その間に関西国際空港を水没させ、
日本海に抜けた後は
北海道にも甚大な被害をもたらした。
北海道はその直後に
地震にも見舞われる。
一刻も早い回復を祈念したい。
SNS全盛の現代では
雨風の猛威が
いち早くタイムライン上に乗る。
少しだけ心が安らいだのは
神戸市長田区の動画。
この地区ゆかりの漫画家、横山光輝の
功績を記念し同区の公園に設
置されていた全長18㍍の鉄人28号像に
猛烈な台風が襲った。
しかし像は倒れる事無く、
台風一過でピカピカに磨き上げられていた。