証券ビュー

森羅万象

虚の値の出来高 硬軟模様眺め (2018.03.23)

昭和の風林史(昭和五七年三月四日掲載分) 
潮時くれば勝手に崩れる
相場は人為の及ばざるものなり
という事を知っておれば、
下がる時がくれば下がる。
ひさかたの光のどけき春の日に
小豆の相場のたりのたり。
商いが薄いということは、
投機の食欲がないわけで、
食欲がないのは体調が悪いか、
たべるものに飽きがきたかである。
ものをたべないと体力が弱る。
セールスも単品取引員も、これでは困る。
上がるか、下がるか相場の居場所が
大きく変わると、
おカズも変わって食欲が出る。
出来高は、食欲のバロメーターである。
上昇トレンドから相場は
踏みはずす格好になった。
しかし取引員の自己玉の買いが大き過ぎる。
取引員側からいえば
今の小豆のポジションは上げ賛成になる。
期近限月も売り方は玉負けである。
渡す品物が読めているあいだは、
売り方まるで
ガダルカナル島の制空権を握られた日本軍。
人の話によると、なにによらず
モノの売れ行きが極端に悪いそうだ。
それは手軽な一杯飲み屋でさえ閑だという。
国会が野党の減税要求で審議が止まるのも、
国民生活の苦しさのあらわれである。
物の売れない時に小豆だけ売れるはずがない。
そのように思うから相場を売っておこうと考える。
しかし市場理論では、内部要因が下げさせない。
相場というものは、
下がる時には自然勝手に下がるものだが、
それには時期、潮時がある。
見ていると、どうやらその潮時が来たみたいだ。
売っている人から電話が多い。
相場が百円、二百円高いと気になるらしいが、
その節の出来高をご覧になれば判ることです。
それは実の値でなく虚の値だから、
すぐ下がります。春の天井打っています―と。
●編集部註
 まさか現役の相場師に
小豆相場で本歌取りされるとは、
紀友則も思わなかっただろう。
紀友則は、土佐日記の作者、紀貫之のいとこにあたる。
 昨今、競技かるたを舞台にした漫画が評判を呼び、
映画化され話題になっているので
〝ひさかたの―〟で、
ポンと下の句が出て来る人は多いだろう。
 功利主義や合理主義が偏重される世の中になると、
古典や教養としての文学の類が
白眼視される傾向が。
斎藤緑雨も筆は一本箸は二本と自嘲する
現在もその傾向が強い。
世界的に
反教養主義が席巻しているように見える。 
だが、人はパンのみにて生きるに非ずともいう。
何事も、無駄なところにヒントは眠っている
 経済本を読むくらいなら、
絵の一枚でも観て感性を養った方が良い、
と古参の相場師に言われた事を思い出す。