昭和の風林史(昭和五七年一月二十二日掲載分)
押しといて月末高コース
月末は高いと見る。
そのために押すが、押しても浅いので物足りん。
冬眠相場は困る。
小豆市場は焦げついて、
どうもならんので緩めてみるべえ―
というわけで六本木筋の意向を
確かめるべく期近が反落。
先月は桑名筋。
今月は六本木が当番みたいにいわれているが、
六本木よ、受けるのか、受けんのか?
と相場が催促していた。
台湾小豆がどれだけ渡しに出るのか。
21日名古屋港に加商の七コンテナ陸揚げ。
渡すのかどうか。
台湾新穀は一見大納言なみ。
ツヤが少しなんだが、受けてもよろしい。
問題は積極受けすると、
なんだかんだと文句の多い電話攻勢を
受ける今の市場環境である。
これは悪いくせをつけたものだ。
定期相場の負け犬が
役所や取引所に土俵の外で工作する。
役所や取引所に
確りした態度がないからこうなる。
今のような市場環境では
小豆商いは淋れるばかりだ。
ルールはルールで守るべきは当然だが、
四万円付けるか付けんかの、
あの時と同じ考えでやられたら、
是が非でも小豆じゃなければ投機でない―
という人以外は、そっぽを向く。
まずは証拠金を引き下げるべきである。
突いて駄目なら引いてみな。
先限の三千円割れは買いたいが、
割らないだろう。
現物は逆ザヤの期近に渡して、
当用買いは桑名から手当てする。
桑名は俵が現金に変わるのを待って、
陽気のよくなる三、四月頃から
本腰を入れる段取り。
『この小豆は三川(さんせん)が入って絶対上だ』
と信念の米常祥雲斉教祖のもとに
ホクレン、メナード、ホンチュー、タチカワ
という連合艦隊が51年相場の再現を狙っている。
売り屋は三川は三川でも
山川草木うたた荒涼じゃなどと言う。
本間宗久、三山、三空、三兵の極意を知らないな。
ともあれ下でもよい、目下は動くこと第一だ。
●編集部註
筆者は当時の相場状況を知らない。
しかし、風林火山は
相場に関しては極私的である反面、
相場運営に関しては無私の人であった事は
よく知っている。
従って
〝役所や取引所に確りした態度がないからこうなる〟
という憤りに私はない。
事実、最後の最期まで運営を批判し続けていた。
誤解のないように述べておくが、
批判と悪口は全く違う。
何でもかんでも悪く言うのが悪口、
対象の本質をしっかり理解した上で、
矛盾点や悪い点を指摘するのが批判だ。
対象に愛がなければ、決して批判は出来ない。
風林火山は、相場に淫する事なく愛していた。
それ故に多くの読者が付き、
長く読まれ、
こうして三十余年前の文章も色褪せないのだと思う。