昭和の風林史(昭和五七年一月十二日掲載分)
節分までは上昇トレンド
ひたすら待つだけというのも相場奥の細道。
二千五百円以下を買いたいが、その値はない。
小豆相場は暮の16日に四千円を、
ちょっとだけ抜いたあとは肩下がりで
三千円までの千円幅を押したり突いたりで、
これを引き継ぎ足でみると
小さな山、小山ができている。
弱気している人にとっては、頭が重いと見る。
名のある買い方が勢揃いしていて、
なぜ上に行かんのだ?―と。
それは
(1)あわてることはない(という買い方の気持)。
(2)六本木筋に、うまいところを
食われてしまうのも馬鹿馬鹿しい。
(3)流れは変わらないのだから安値を仕込みたい。
―そのような気持ちがあると思う。
千円下の三万二千円割れがあれば、
誰だって買いたいのでなかろうか。
千円上の三万五千円は一応利食いして、
六千円に向かっては売り上がりたい。
上昇トレンドは破れていない。
これは春相場における買い方努力相場で、
昨年春と同じパターンである。
昨年春の頃と値頃水準が違うではないか
というかもしれないが
今年は輸入調節という政策相場であるし、
市場のボリウムが違う。
さすが、ここにきて三万円割れだとか、
二万八千円目標という声を聞かなくなった。
段々相場の構造が判ってきたのであろう。
しかし口には出さなくても
頭のすみのほうに、
相場というものは、
そのようになった時が怖いのだ―と、
万が一の事を考えている人は多い。
でなければ売り玉辛抱できないだろう。
買い方の、いつわりない考えとしては、
六本木筋が降り
(投げ)てくれないかである。
千円下げでもよい。
投げ出してくれたら
判りやすい動きになるが。
ところが、六本木筋だって、
安けりゃ買いたい。
だから動きが今みたいになってしまう。
鳴かざれば鳴くまで待とう―である。
●編集部註
ここで登場する「六本木筋」は、
当然今の六本木とは違う。
1980年代の六本木である。
今の東京ミッドタウンのあたりは防衛省があり、
六本木ヒルズのあたりは、
現在の建物の一つ前の建物を建設中だったはずだ。
そのビルに六本木WAVEというレコード店と
シネ・ヴィヴァン六本木という
映画館が入っていた。どちらも83年開店だ。
ヒルズの前にはある商品先物会社の名前が
大きくかけられていた。
それにしても六本木は相場に何か縁があるのか。
不動産投機でも死闘が繰り広げられている。
「六本木筋」は、今もかくしゃくとしておられる。