証券ビュー

森羅万象

相場環境の変化 ポジション後追い (2018.01.19)

昭和の風林史(昭和五七年一月十一日掲載分)
単純明快買うだけである
判りやすい小豆相場だと思うが、
考えすぎるとこれが判らん。
あとは意地がつくだけ。
安値の売り玉を持っている人にとっては、
三万円大台割れは、もうないだろうが、
せめて三万一千円あたりに崩れないだろうか
という心境であろう。
当初は二万八千円がある―と考えたり、
時により二万六千円も―
などと思ったこともあろうが、
需給が調節され、
政策がらみの輸入作業を見ていては、
三万円割れは、もう考えられない。
要するに相場の構造変化である。
一方、強気側の考えの芯は
三万五千円中心の、上二千丁。下二千丁。
このゾーンにおける相場というふうにみて、
春相場は三万五千円ないし
六千円あたりに目標を置いている。
ということは三万三千円台は
安心買いできる水準だし、
三千円割れは、絶好の買い場なのだ。
中国にしても台湾にしても
相場を崩してまで売ろうという気など毛頭ない。
まして輸入商社も問屋も強基調が、
なによりも好ましい。
役所また作付け増反、神にも祈る気持ちだろう。
相場の値崩れ、暴落を願うのは、
あに売り屋の投機筋だけである。
このような簡単なことが判らん。
それは考え過ぎるからだ。
相場する人は実にいろいろな事を考える。
しかし考え過ぎて、それにとらわれるから
環境の変化に対応できず、
ポジションの転換が後手、後手になる。
将棋の加藤一二三氏は五百手ぐらい考えるが、
要するに最初のひらめきが最善の手になりやすい―と。
相場もそうだと思う。
引かされた玉を長期間持つと第一体に悪く、
良い考えも出ず、
あとは意地だけついて傷を大きくするものだ。
●編集部註
 このセクションを担当していて
何が面白いかというと、
平成の御代で時の人となっている人物が、
三十数年前の文章の中で登場してくる場面である。
 仮に筆者がタイムスリップして、
この当時の人達に「加藤一二三は将来、
ひふみんの愛称でテレビでマスコット的な扱いを受けて
引っ張りだこになり、歌手デビューして、
恐らく自分の孫よりも若いアイドルに囲まれて
歌番組に出演するよ」と言っても
信じてもらえないどころか、
確実に狂人扱いされるだろう。
実際、棋界のレジェンドがこんな状態になるとは、
全く想像だにしなかった。
 落語の世界に「長生きも芸のうち」
という言葉があるという。
十四歳の藤井聡太四段に敗れてしまった加藤一二三九段は
落語家ではないが、棋士引退を表明した後は
結果的にタレントとして2度目のブレイクを果たす。
長生きはするものである。