「いへば唯それだけのこと柳散る」 万太郎 (2017.11.17)
昭和の風林史(昭和五四年十一月十二日掲載分)
小豆期近底抜け 輸大は円安で買う
大阪輸大の自社玉は売り買い接近している。
小豆の自社玉は東西とも圧倒的に売りが多い。
「いへばただそれだけのこと柳散る 万太郎」
海外市況、
たとえばシカゴボードのリスクを負担し、
フレートのリスクを勘案し、
為替変動に危険をさらし、
しかるのちに国内定期の変動に気をくばる。
商社のビジネスマンは、
あれでよく神経がもつものだと、
そのタフなことに感心する。
夜遅くまで仕事をしていて、
帰路、スナックバーのボトルをかたむけながらも
ニューヨークが気になり、
ママさんちょっと電話をかしてや―
と国際ダイヤルをまわす。
輸入大豆相場は、
中国と為替にふりまわされている。
輸大とは、売るものなりと
覚えた大衆筋の売りが期近ほど面白くない。
品物はあるが、品物がない。
穀取期近に渡す玉がない
というのが今の市場の表情である。
中国という国は、
約束の堅いはずの国であるが、
まだ近代国家になっていないから
商取引に関しては、頼りない事おびただしい。
売るとか、売らんとか、
あそこのお国のかけ引きは日本人に歯がたたない。
精糖相場は海外高でも反応が鈍い。
取組みは、やや売られている。
相場としては海外も買い疲れの様子で、
あとは先月納会を
受けた商社の力の入れようというところ。
まあ今月も、品物は結構集まって、
倉庫は砂糖であふれている。
三百枚は渡るのではないか。
東京―大阪トラックで
キログラム当り六円七十銭。
機帆船なら四円四、五十銭で移動できる。
来るはずのなかった九州からでも、
値は荷を呼んで先月納会、あけてびっくり。
御堂筋の小鬼も、
砂糖市場では?まった格好だ。
線型は、売り線になったり
買い線になったりで、
高値波乱を繰り返し、
頭デッカチの重い姿である。
現物の売れ行きはさっぱりだし
実勢遊離の相場を、
為替とロンドンにひっかけても
相場様は、もうしんどいと言っている。
さて、小豆のほうは静岡筋の手仕舞いで
期近は一代の新安値である。
静岡筋にしたところで、
もうこんな小豆につきあっておれない―
という気持ちであろう。
いまの小豆相場は、まったく無味乾燥。
せいぜい自社玉のポジション(圧倒的な売り)を
参考にして、深入りしないことであろう。
いずれ一枚が80俵という事になれば、
逃げた人気が戻るかもしれない。
●編集部註
テレックス時代の相場師たちを
心から尊敬する。
その昔、外銀のディーリング部には
テレックスのテープをさばく人がいたという。
どんなテープかは
『スティング』という映画をご覧戴きたい。