「しがらみに少し浪たつ野菊かな」 悌二郎 (2017.10.26)
昭和の風林史(昭和五四年十月二三日掲載分)
強弱ない市場 輸大も手が出ない
商取界に流入している投機資金は限られていて
穀物から精糖市場にそれらが移動してしまった。
「しがらみに少し浪たつ野菊かな 悌二郎」
今年の台湾小豆の作付面積は
前年比一割ないし一割五分の減反予想である。
去年が一万七千㌶だから、
一万五千㌶前後ということになる。
減反分は日本向け輸出の
枝豆(冷凍)の契約栽培が増加している。
日本の小豆相場が低迷しているため、
農協筋が、小豆の作付けを増やさないように
指導した効果が上がったようだ。
成育は目下順調である。
今年は閏(うるう)年の関係で
農作業は全般に遅れてもよい年
とされているが
幾つか接近した台風も全部それて、
これは神の恵みだと感謝されている。
台湾小豆の在庫は千㌧ないし二千㌧が
投機筋の手にあると見られる。
昨年の生産高三万一千~二千㌧として
日本向けに一万四千㌧。韓国に四千㌧。
アメリカ、東南アジア向けスポット
千㌧~二千㌧。
台湾内消費と種子用で六千㌧~八千㌧。
加糖アン向け三千㌧~四千㌧―
というのが大?みの出荷動向である。
台湾の国際空港は今年二月から
台北と新竹の中間にある桃園に移った。
桃園空港は成田空港の一・三倍、
建設費は成田の六分の一という事で、
台北から高速道路で
ほぼ一時間(台北から高雄まで四時間)。
従来の松山飛行場は
ローカル空港として使用している。
台北から北の玄関・基隆市まで
日本統治時代は汽車で小一時間を要したが
高速道路が開通して
20分で行けるようになった。
現在の台湾は景気がよい。
ちょうど日本の
15年前のような状態ということだ。
タクシーも三年前までは中
古のボロボロの車が走っていたが、
今では東京、大阪と大差はない。
ところで相場のほうは精糖に
投機筋の関心が集中して穀取さんは
閑古鳥が鳴いている。
小豆の地合は確りしているみたいだが、
ホクレンの管理相場―
という印象を強くしただけに、
たとえ地合が強くても
投機心理は無反応である。
あとは下期雑豆輸入の発券→通関の時期が、
いつ頃になるか(その前に
ヒヤリング→発表という段階がある)によって、
相場の値頃観も違ってくるが、
一般投機筋にとって、
そのような予測分析は難解でもあり、
自然相場に対しても無関心さを強める。
一方、輸入大豆も
戻り一杯をした足取りに入った。
誰もが売ってみたい値にはとどかない。
●編集部註
当時の日本近隣のアジア諸国は、
今とは違うベクトルで不穏であった。
韓国では朴
正熙が10月26日に暗殺されたし、
台湾は〝外省人〟と〝内省人〟との亀裂が
生々しかったし、
中国は公式に文革の終結が宣言されて
まだ3年しか経っていなかった。