昭和の風林史(昭和五四年十月五日掲載分)
選挙済むまで 堅調相場が続くか
小豆相場はエキサイトするところはない。
踏んだり投げたりすることもない。
ソロバン片手である。
「長雨の降るだけ降るや赤のまま 汀女」
小豆相場が強張っているのも
総選挙が済むまでであろうという観測に、
かなりの信憑(しんぴょう)性があるみたいだ。
本来ホクレンは生産者の立場で、
集荷した商品を
少しでも高く売らなければならない
道義的な責任がある。
にもかかわらずホクレンは定期市場で、
売り仕手のような存在になった。
いみじくも「ホクレン管理相場」。
「ホクレン主導相場」と名づけられた。
ホクレンは、相場を潰すのが目的なのか
―という批判が生産者から出ても当然である。
ホクレンは余りにも相場師になりすぎて、
ホクレン本来の役割や機能から逸脱していないか。
そういう批判が、せめて選挙中だけでも、
相場に水をかけるようなことは、
ひかえて欲しい―という要望になっても、
これはなんら不思議でない。
期近限月はホクレンの買い戻しなどで
21日の安値から二千丁戻し。
先限は二万五千円の壁を意識する水準。
市場の関心事は
次期外貨ワクに集中して臆測が乱れ飛ぶ。
こういうものは、
決まってみなければ判らないもので、
決まれば、知ったらしまい。
織り込み済みとなる。
それより北海道の小豆の生産者の
希望手取り金額である。
素俵二万二千円は妥当なところであろう。
消費地千円から千五百円上として、
二万三千円から三千五百円。
このあたりが計算上では
相場の底と判断できるわけである。
下値は二万三千円。
では上値は―となると、
精一杯の強気で二万六千円。
普通二万五千円以上は売りと見ている。
市場に強力な投機家が存在して、
上値を買っていくという時代ではない。
投機家は市場の構造を知り尽している。
そして現在、
小豆相場に取り組んでいるような人は、
小豆に関しては
プロ中のプロばかりであるから、
相場の意外性というものがほとんどない。
ましてこれからは需給相場である。
外貨ワクを根底にして
中国小豆(交易会)、
台湾小豆(作付け動向)、
北海道小豆の出荷状況など
キメの細かいソロバン片手の相場の動きになる。
従って、小豆相場にエキサイトする場面を
期待する人は失望する。
建玉を踏んだり投げたりする必要のない相場だ。
●編集部註
実際、当時の小豆相場は
2万4000円を挟み
前後1000円の相場。
一見クールな筆致だが、内実悔しかったと見る。
海の向こうは東西冷戦の
歪みで金融市場全般が動いている。
これはビジネスチャンスでもあった。
しかし、価格の安定を図るのは
為政者や役人の務めでもある。
どちらも正しい。
しかし両者とも、
相手が間違っていると思っている。