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森羅万象

「塗下駄の湿りや萩の露曇り」 紅葉 (2017.09.22)

昭和の風林史(昭和五四年九月十八日掲載分)  
下値深そうだ 投げが投げ呼ばん
◇…この小豆相場は下値が深いと思う。
下げのキッカケがつくと投げが投げを呼ぶだろう。
「塗下駄の湿りや萩の露曇り 紅葉」
◇…毎日の事であるが、原稿を書く時に、
なんの抵抗もなくすらすらと書ける時と、
書き出す時から煙草を何本も吸ったり、
コーヒーを飲んだり、シャープペンシルの芯をかえたり、
あちらこちらと電話を入れてみたり、
なんとも原稿の纏りがつかない時がある。
そういう時は、相場が動いていない。
閑散低調。これといった材料もない。
正直言って今の小豆相場は強弱しにくい。
◇…戻れば売られる相場が、戻らなければどうなるか。
時間過ぎざれば、戻らなくても売られよう。
◇…上値にはホクレンの新穀ヘッジと、
上海における中国小豆の契約如何によっては、
雑豆輸入商社のヘッジも出よう。
一方、取組み内部要因は
高値圏の買い玉が因果になっている。
この引かされ玉は、戻れば勿論だが、
戻らなくても時間切れで投げざるを得ないのである。
◇…また、取引員の自社玉は
七千六百九十一枚売りの
二千八百六十三枚買い(大阪)という大上長である。
東京市場も八千二百四十枚売りの
三千三百九十枚買いと上長である。
◇…売っておけばサヤすべりで期近になると安い。
◇…秋の彼岸を控え、需要最盛期というものの、
売れて当然、売れなければ大変である。
◇…ともかく、中国小豆の上海での商談と、
来月の秋季交易会。
そのあとの台湾小豆の作付けに絡んで、
ともかく北海道小豆が、
なんの〝違作〟もなしで百万俵近い収穫なれば、
これはもう供給面から
高値を付けるという可能性が消える。
◇…市場人気は確かに弱いと言えるが、
弱い人気であっても、
二万四千円(先限)以下は
値頃感で新規売れないという空気だ。
◇…市場が、おだやかな時なら
二万四千円以下の下値は深いとは、
思わないのである。
だが、ひとたび値崩れにはいると、
一種のパニックであるから、
売りが売りを呼び、投げが投げを呼ぶ。
まさかと思う値が付くのは、そういう時である。
◇…相場は非情である。非常といってもよい。
因果玉を辛抱しているあいだはよく知っていて、
少しも好転しない。
昔の人はこの間の事情を
「煎れたらしまい。投げたらしまい」と言った。
投げ尽すまでは、相場に底がはいらない。
悲しい事だがこの小豆下値が深いと思う。
●編集部註
利が乗った玉はすぐ手放すのに、
因果玉はなかなか手放さない不思議。
我慢して勝利する経験など
数えるほどもないのについ我慢する不思議。
諦めて手放した途端その方向に向かう不思議。
機敏に動けず、動かぬと相場が動く不思議。
相場は不思議だらけだ。