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森羅万象

「稀といふ山日和なり濃竜胆」 たかし (2017.09.11)

昭和の風林史(昭和五四年九月五日掲載分) 
買い妙味ない 値頃感は通用せず
◇…小豆は買い妙味のない時期である。
巨大売り仕手的なホクレンや雑豆輸入商社の前では手が出ない。
「稀といふ山日和なり濃竜胆 たかし」
◇…相場の上昇期は、
相場が高いと出来高が増大し、
相場が安いと出来高が細る。
逆に相場の下降期は、
相場が安いと出来高は増大し、
相場が小戻すと商いは細るものである。
 
◇…九月三日新ポ、ストーンと値崩れして、
小豆の出来高がふえた。
投げと新規売りである。
◇…北海道の作柄も、ほぼ見通しがつき、
供給面は不安がなくなった。
◇…天候相場が終り、需給相場の開幕である。
下期雑豆輸入ワクに市場の関心が移り、
北京商談や秋の交易会、
そして台湾小豆の作付け動向。
あるいは需要期における冷凍小豆、加糖アンの
入荷などが相場の強弱材料になる。
◇…このような段階に入ると、
相場の主導権は、雑豆輸入商社と、
収穫後の小豆販売を担当するホクレンが
市場の制空権を握る。
◇…ホクレンは、言うならば、
現物を背景とする巨大な売り仕手である。
雑豆輸入商社は、攻撃的なヘッジャーである。
◇…この二ツの存在に、
いかようにして未組織な投機家が対抗出来ようか。
当然、投機筋も環境に順応して
売りポジションにまわる。
◇…相場が高くなるという要因は、当面、
来週あたりに可能性を持つ北海道の
冷え込み、早霜ぐらいである。
この場合、取組みが、
随分売り込まれていたならば、
勢いよく相場は反発するだろう。
それは、内部要因による自律反騰である。
◇…しかし相場の基調というものが、
供給面に不安がないという流れの中にある限り、
外部要因による自律反騰は、
短期間に終ってしまう。
そして、戻しただけ悪くなった―
という相場になる。
◇…考えてみれば、先行き妙味のない相場である。
いまの相場が、もう、かなり下げたあとの、
日柄を十分に経過したものなら、
ある程度の反発高というものも期待出来ようが、
内部要因面から
反騰出来るほど売り込まれた取組みでもない。
そして、高ければ、ホクレンあるいは
ヘッジ筋が手ぐすねひいて売るだろう。
仮りに相場を売り崩すという考えがなくとも、
売り勢力と買い勢力を比較した場合、
力の差は、あまりにも開き過ぎているように思う。
値頃感などで買われるようなら、
さらに相場は重くなるだろう。
●編集部註
この10年ちょっと前まで、
売買手口は公開されていた。
つまり、どの会社がどの銘柄を
何枚売買していたかが日々公開されていた。
しかもこの時取引は板寄せだ。
従って内部要因は今よりも重要な予測因子であった。