「土用には強し残暑に弱かりし」恒明 (2017.09.05)
昭和の風林史(昭和五四年八月三十日掲載分)
反発はするが 売り場待つ人多し
しばらくは輸入大豆に人気が集まりそう。
小豆も目先は反発しそうだが、売り場待ちの人が多い。
「土用には強し残暑に弱かりし 恒明」
大阪はどうですかと聞かれる。
東京も名古屋も、
いまひとつ掴みどころのない状態の中にある。
大阪は、阪神タイガースで、
イライラ病の人がふえたぐらいで、可もなく不可もない。
商取業界は東京も大阪も名古屋も、
皆同じテーブルについていて、
お皿の数が少ないのはどこも一緒。
お酒のほうも歌でもうたおうというほど浮き立たず、
まあ言うならウイスキーグラスの氷が溶けて、
薄くなったのを、飲むでもなし、
おかわりするでもなしといったところである。
なにかこう、
パーッと気の晴れる、面白い話はないですか?と、
思いは皆同じようである。
商取業界が、無気力になったのは、
要するに儲からないからである。
業界の将来に対する展望が掴めない。
このままだとまるで〝経済界のベトナム難民〟になる。
明日をわずらう事なかれ―とは言え、
なんとも空虚な昨今だ。
ポオル・ベルレエヌの詩ではないが、
げにわれはうらぶれてここかしこ、さだめなく、
とび散らふ落葉かな―である。
これで九月の声を聞く。
九月十月、なにが一番嫌かといえば、
夕暮れ時のセールスの悲しみである。
この時期が、一年中で一番淋しい。
足を棒に、成績はあがらず、日は暮れて、
待つはちちろ鳴く独身寮。
身にしみて、ひたぶるにうら悲しくなる。
一方、相場に打たれた投機家も、
家を出て五町ばかりは
用のある人のごとく歩いてみたれど―。
金策するあてはなかりき。
ところで小豆相場は誰もが売り場待ちのようだ。
霜が降っても槍が降ってもワッときたところは売り。
そのワッとが、待っている時にはこない。
小豆が閑なら輸入大豆に関心が移る。
相場の世界のよいところは、
値さえ動けば人気が必らず寄ってくることである。
輸大相場は下値を横に這って下げ余地のないことを知らしめた。
そして円相場がジリ安をたどりだした。
売り安心の輸大だっただけに
反発があっても不思議はないが、
腹の底では、この輸大の戻り一杯を見つけてやろう
―というのが本心でなかろうか。
小豆のほうも、目先は反発してよいところにきている。
●編集部註
実際、輸入大豆相場は9月に目先の底をつけて上昇する。
一方、シカゴ大豆はまだ低迷が続く。
何故か。
為替である。
7月下旬から8月上旬、1㌦=215円だった。
8月末から9月頭には、220円となり、
10月頭に225円となり、月末には235円を超える。
11月上旬、240円を突破。
11月26日に250円74銭まで進んで、
やっとここで押しが入る。