昭和の風林史(昭和五四年七月六日掲載分)
弱気が多い方があとになって相場が大きくなる。
本年の小豆相場は後半が勝負である。
小豆相場が二万五千円、六千円の当時、
三万円の目標に向って誰もが強気した。
その当時、市場で言われていた材料は
石油の値上り、インフレ再燃、異常気象等であった。
今はそのような事を言わない。
しかし諸物価は徐々に値上りしている。
石油は20ドル時代をむかえている。
北海道の小豆の生産費も当然値上りしている筈だ。
また流通段階のコストも上昇している。
相場が暴落したから人の気持は弱気になったが、
現実の社会現象は小豆相場が
二万五千円、六千円していた当時よりも
厳しいものになっている。
そのような事から、あの当時言われていた事が
今年の後半になって
相場の上に出てくる事だろうと思う。
60万俵の供給過剰という見方にしても
それはあくまで予測にすぎない。
品物が余るようなら生産者保護の立場から
当然輸入を削減する政策がとられよう。
また今年の北海道の生産高にしても、
これからの天候次第でどうなるか判らない。
人々は弱気になりすぎて
物事を極端に考え勝ちであるが、
期近限月で一万八千円台の小豆、
新穀二万二千円という値段は
言うならば陰の極である。
既に相場の方は下げ過ぎの訂正期に入っている。
高値での買いつき玉はほとんど整理された。
そして安値で売り込んだ。
高値取り組みの相場が上に行けないように、
安値取組の相場は下に行けない。
人々が下に行けない相場である事を判りだしてくると
相場はもう今のような低い水準に
じっとしてはいない筈だ。
よく相場は相場に聞けと言うが、
安値から連続陽線を立てて上向いた相場は、
これは下げ値幅、下げ日柄
そして取り組みの変化などから判断して
確かに大底を入れた現象である。
出直り初期の相場は人の気持がまだ気迷いだから
相場の方も上げ過ぎると押し目を入れて
何となく頼りない所もあるが、
だんだん力をつけてくるものだ。
昨年の小豆相場は六月まで上昇し、
あと大豊作と規制強化、仕手排除で暴落したが、
それでも先限二万円は抵抗があった。
今年はまだ作柄が
海のものとも山のものとも判らないのだから
弱気はできない。
●編集部註
生産地市場と消費地市場の違いで
この頃の小豆相場と米国産大豆の動きは
明確に明暗が分かれる。
6月末に〝コツン〟と
底打ちの音が聞こえた小豆相場は一カ月間登り調子。
その一方、国内大豆市場は
シカゴ大豆の不調に引っ張られて伸び悩む。