昭和の風林史(昭和五四年六月二七日掲載分)
自律戻し態勢 だが下げ日柄不足
目先は戻すところにきている小豆相場。
戻し具合を見てドカドカとまた売られよう。
「夕焼けて何もあはれや船料理 汀女」
小豆相場は、環境などの変化はないが、
内部要因面で、投げたあとの新規売りという、
人気の変化もあって、
一応は止まるか戻す段階と見るわけだ。
市場では、『当り屋につくより、曲り屋に向かえ』で、
“投が余し”(買い玉を損切りして、新規に売ること)を見て、
満を持していた売り方が利食いを入れる。
期近限月二本が二万円大台を割ったという心理的な、
安値売り警戒人気もある。
ともあれ“利食いして破産したものはいない”
というアメリカ相場金言にもあるように、
利益は確実に確保しておく。
あと、戻せば再び売り場狙い。
このように、手がよい筋にとっては、
ゆとりがあるから、相場の呼吸が手にとるように判る。
小豆先限(11月限)一代足で五ツの窓をあけて下げた。
五ツの窓のうち下の窓を理めた。
その上の窓(大阪三千五百六十円→七百四十円)を
埋めるだけの力があるかどうか。
前回は七百四十円戻しだった。
しかし戻しただけ悪くなり、戻した幅の三倍返しで
二千三百円弱を一気に棒で落した。
取組みは下げながら減少したあと、
下げながら微増の段階を迎えた。
これが、戻しながら取組みが増加すれば、
ある程度の反発が予測出来る。
(逆ウオッチのチャート)。
相場が見える時は、ズバズバ言いきり、
それがピタリピタリ神わざのような
大倉商事の川村雅宣氏は、
『輸大は高値圏での逆張りでしょう。
小豆は、五百円戻し、場合によって七百円戻し
(無理だろうと思うが)で先限二万二千円を割るか、
割らぬかのあたりの下値を取りに行くと見る』。
小豆の環境が好転しているわけでないから、
戻すのは相場の自律戻しに過ぎない。
玄人筋は、その戻し具合を吟味する。
戻りが、もうこのあたり一杯だと思えば、
すかさずドカドカ売ってくる。
下値千丁を取りに行くということは、
頭とシッボは猫にくれてやれ
―という主義に反するが、
それを取りに行くのがまた相場の醍醐味とする人は多い。
釣師が幻の石鯛を求めるようなものかもしれない。
そうこうして、悪魔のような六月も過ぎていく。
●編集部註
やはり相場玄人は違う、
漁師が潮を読むように、引き際を考えている。
取引を経験すればする程、痛烈に感じる。
相場は、建てるよりも
利食い損切りを問わず手仕舞いする方が難しいと。