証券ビュー

森羅万象

「瓜苗に竹たてありぬ草の中」 虚子 (2017.06.16)

昭和の風林史(昭和五十年六月二日掲載分)
買い方自壊し 音たてて崩れん
ピービーンズで袋叩きという場面を見るだろう。
手亡相場は音立てて崩れ落ちよう。
「瓜苗に竹たてありぬ草の中 虚子」
取引所のフロアーの温度が上昇を続けている。
小豆、手亡ともに売り方買い方熱くなった。
感情の火花が炸裂している。久しぶりに見る大きな勝負だ。
週末の一節手亡でカネツ貿が10月限八五〇枚、
カネツ二〇〇枚の強烈買いの手口が目立った。
また雑豆輸入商社の三晶が10月限を一五〇枚と纏まって売り、
過去に仕手戦を幾度も経験してきた山大が二〇〇枚売った。
山大の関口営業部長は
『お陰様で小豆の買い玉はピークを利食いさせてもらった。
お客さんは気分的にも明るい。
そこで手亡の相場が、
どう見ても実勢から離れ過ぎているので、
これを弱気してもらった。
買い方は、高値を支える格好に見える。
われわれも過去に何度か経験してきたが、
いまの買い方の相場心理状態は嫌というほど判る。
あける時はあけ、ふるい落としを入れる時は入れる
―という事が、玉の膨らみにつれて大きな負担になる。
高い水準と尨大なちょうちん。
場づらの面では、
どう見てもこの相場モロイ感じがした』。
これだけの大きな取り組みである。
あるだけの現物を受けて、値段を煽れば、
ある程度のいう事を相場はきくが、それは相場の若いうちで、
29日のストップ高あたりから、
買い方に強引さと無理がはっきり見えてきた。
そして30日の相場など、
小豆崩れになびかぬよう懸命な買い支えが判然と見えた。
市場の人気では、一万五千円とか、11月限の一万九千円
という噂がもっぱらであるが、人気と相場は別のものである。
買い方の三市場に置ける玉操作や価格チェックを見ていると、
戦いの山場は過ぎた感じだ。
〝熱くならない仕手〟と言われても、
激戦のさなかになれば、もちろん闘志は満々、
殺気立つのが仕手戦である。
人々はその興奮を楽しむために相場をする。
すでに買い方は六千枚を超える買い玉である。
果たして巧妙に勝ち逃げ出来るであろうか。
その答えは「ノー」である。
玉をさらにふくらませていけば、
遂には自壊するのが買い占め戦の宿命である。
買い仕手はピービーンズに魂を抜かれるのであろう。
 ●編集部注
 一騎駆けは合戦の華であると、
隆慶一郎の「一夢庵風流記」にある。
 当時の商品先物取引はザラバでなく板寄せが主流。
さすれば、各節でのストップハナ取りは
「相場師の一騎駆け」に等しい。
【昭和五十年五月三一日小豆十月限
大阪一万八三三〇円・九〇円安/
東京一万八四七〇円・六〇円安】