昭和の風林史(昭和五十年五月二九日掲載分)
終局は大暴落 煽りは利いても
手亡仕手戦のとがめは大暴落以外にない。
初めは思わぬほどうまくいっても
終わりは全う出来ない。
「鮎走る見えて深さの測られぬ 種茅」
巨大な取り組み。強烈な仕手介入。
手亡相場は燃えている。
そして相場はまだ上値ありという市場人気。
しかし、いずれはピリオドを打つ相場である。
どこで、どういう格好で終焉を告げるか。
他商品市場で連戦連勝してきた静岡筋が、
その勢いに乗って遂に手亡戦線に介入してしまった。
過去、手亡相場に介入した仕手は、
終局において徹底的な壊滅状態に陥っている。
それはモスコーをせめて
冬将軍に破れたナポレオンの如く、
そしてヒットラーの如くいずれも敗退した。
まして、ピービーンズをさわった仕手は
あたかも悪魔に魂を抜かれるように
ピーの軍門に下った。
いま、静岡筋は敢て手亡相場に挑戦する。
それは相場師としての
避けがたき闘いなのかもしれない。
そこに破れざりし手亡相場があるから挑戦する。
あるいは悪魔の如き手亡相場が
見えざる手で仕手を招いたのかもしれない。
思うに仕手戦のとがめは大暴落以外にない。
ピービーンズ十万俵の圧迫を無視した腕力買いは
遠からず判然とした解答を相場が出すであろう。
七月発券、九月入荷の新ワクによる大量輸入も、
この相場の先行きに対し戦慄とさせるものがある。
仕手筋の市場テクニックがいうことを利くあいだは、
相場としては若いものがある。
しかしそれも水準を高めるにつれ、
反比例的に圧力が増大する。
大下げのあとの総悲観総売りの相場が、
自律反騰期に入ったところを、
そっと買った車が思わぬほど軽くいう事を聞いた。
買い方仕手自身、こうも軽くいくとは、
よもや思っていなかっただろう。
うまく行き過ぎたのである。
そうなると〝真珠湾からミッドウェイ〟
までの一直線になる。弾みである。調子である。
行き着くところは戦線の拡大で
ガダルカナルからインパールとなる。
戦い勝って天下、善しと曰うは
善の善なるものに非ず。
市場人気は、ようやく強くなりかけている。
長期戦にもつれ込むとも言う。
だが、この戦いは短期決戦である。
ピービーンズという大きな
釣り針のついた餌を飲み込んだが最後、
この買い方仕手は壊滅する。
●編集部註
大軍はゲリラ戦に弱い。
相場もしかり。特に今の方が顕著。
試しに薄商い銘柄の分足を見ると良い。
至る処に釣り野伏せが仕掛けられている。
【昭和五十年五月二八日小豆十月限
大阪一万八五二〇円・七〇〇円高/
東京一万八五三〇円・七〇〇円高】