「河鹿鳴く水打って風消えにけり」 亜浪 (2017.05.30)
昭和の風林史(昭和五十年五月二十日掲載分)
誰が為にある 売るためにある
手亡相場は売るためにあるようなものだ。
誰がために鐘は鳴るではなく、売るために手亡がある。
「河鹿鳴く水打って風消えにけり 亜浪」
手亡の十一月限は、どのあたりに生まれるか。
そしてその生まれ値が、
どうなれば強いと判断し、逆に弱いと判断するか。
十月限が基準になる。
十月限と十一月限の格差が二千八百円。
それに諸掛りとクレーム料五百円と見て三千三百円幅。
十月限より三千三百円上に十一月限は
生まれなければならないが、
とてもとても、そのような力はあるまい。
仮りに二千八百円だけのサヤを買って生まれたとしても、
すかさず黒塗りの矢が飛んでいく。
ブラック・アローの的になる。
米常商事の大阪支店の加藤憲一氏が
夕方遅く仕事の帰りだ―と小生の事務所に立ち寄った。
小生はウィスキーをなめていたところで一杯おすすめした。
話は相場の事で、加藤氏の言うには、
随分昔の〝風林〟の記事で、
毎年毎年桜の散る時分になると
必ずその言葉を思い出すと言う。
ウィスキーで少し赤くなった顔で
『花は散る散る相場は下がる。
下がる相場に追証がかかる―』。
実に名文句だ、風林語録の中の傑作だ―と言う。
今年も桜の散る時分、
やはり下がる相場の追証を取りに走っていた―と。
書いた本人は、もう忘れていた。
物書きの悪い癖は、書いた事を忘れてしまう事だ。
書かれた人にとっては、いつまでも忘れられない。
刃(やいば)の傷は、
いえるとも心の傷はなおりゃせぬ―と言う。
花は散る散る―か。
桜のころの相場は、たいがい安い。
筆者は、来年三月花散るころ―の
手亡の事を書こうと思っていたら加藤さんを思い出した。
それで、手亡を売って、まず一億円―
というキャッチフレーズを考えた。
本年十月末の手亡供給量は
49年産手亡の繰り返し約二十五万俵。
ピービーンズ(新ワク分を含め)約二十万俵。
合計四十五万俵。
気絶しそうな量に50年度産新穀手亡が乗っかる。
来年三月までタライまわしされるピービーンズを思うと、
六月二日新ポを待たず十月限手亡を売って、
十一月限も十二月限も建つごとに
売れば億単位の利食いだ。
●編集部注
燃料も入った。
買いシグナルも既に
五月九日のローソク足で点灯した。
ジェットストリームに乗った昭和五十年の
小豆上昇相場がついに始まる。
城達也の語りによる「ジェットストリーム」が、
この八年前からやっていたというから驚きだ。
【昭和五十年五月十九日小豆十月限
大阪一万六八五〇円・一四〇円高/
東京一万六九〇〇円・一七〇円高】