昭和の風林史(昭和五十年五月十三日掲載分)
「桐の花葵祭はあすとかや 碧梧桐」
五月の半分を棒に振った感じがする。
連休と交通機関のスト騒ぎでビジネスが停滞した。
その間、穀物相場のほうはギクシャクした。
小豆、手亡は、下げの反動で反発したところ。
これからの相場をどうみるか。
取り組みの大きい手亡が、
やはり投機の対象になっているが、
これはピービーンズの相場という混血種だけに
天災期に入っての反応の仕方にとまどうかもしれない。
時には手亡相場の本性も出ようし、
かといってピービーンズの血が騒ぐ時もあろう。
穀物業界にとっては、混血種類相場の天災期は
新しい経験だけに模索する場面も多いと思う。
市場の常識としては時間をかけて
全限九千円台に低落するだろうという。
あくまでそれは理屈からくる予想である。
だからと言って絶対ではない。
相場の世界に常識はないし、
値動きは理屈通りにはこばない。
人気の面はどうか。
①に気迷い②に戻り売り
③に開き直った大引かされ玉。
売り方は利食いした。
手亡の売りでポケットのふくらんだ人は
小豆の悪目を買おうと狙う。
あるいは手亡の戻りを待って売り直す。
混血の手垢によごれた手亡に執着するか、
ここは一番、まだ相場らしい相場の出ていない新鮮な
純血種の小豆に天災期を賭けるか。
小豆の七千円台はホクレンの売り物が出る―
という警戒心が強い。
だから〝管理相場〟だといわれ、
なかなか本気の強気になれない。
ホクレンとしては、今年の小豆の作付け面積を
極度に抑えたい気持ちがあるはずだ。
そのため播種期には、特に意識して相場を抑えるだろう。
種も播いて、あとはどうにもならない―
という時間切れが来て相場が続伸することは、
これはホクレンとしても大歓迎である。
間もなく相場は作付け面積大幅減反、
四万五千ヘクタール以下を予想してホクレンが売ろうと、
走る時は走る。
いわゆる水瓶(がめ)から火が噴くということになるだろう。
●編集部註
「ミセスワタナベ」という言葉が一時期、
通貨市場で飛び交った時の事をこの文を読んで思い出す。
ここで登場する売り方は素人ではないが、
信念の強さは共通している。
相場の世界で、信念を持った投機玉ほど
強いものはないと筆者は思う。
【昭和五十年五月十二日小豆十月限
大阪一万六八〇〇円・九〇円高/
東京一万六七九〇円・一〇円高】