昭和の風林史(昭和五十年三月二二日掲載分)
亀裂が入った 七千円がカサに
今度は小豆がぶっ倒れる番である。
大もちあいを下放れた相場。長い道のりである。
手亡の大崩れのあとは小豆の番である。
ケイ線で言うところの「もちあい下放れ」である。
今年に入っての先限引き継ぎ線では
平均一万七千二百円どころでもみ合う形であった。
今月に入っても、当限が頑強なのと、
小豆には生産者側の市況対策(調整保管、出荷調整)で
下値は浅い―という安心感があった。
たとい手亡市場がピービーンズの毒気に当てられ、
血染の軍旗がボロボロになろうとも、
小豆とは〝別の世界の出来事〟という意識が強かった。
まして、先に行けば減反がついてまわる年回りである―と、
ひそかに期待する人気である。
だが、しょせん豆には変わりがなかったのである。
人気とはある意味で「連想ゲーム」のようなもの。
移り気で、時には思いがけない方向に向かう。
売っているのはホクレンのつなぎ、
そして荷を手当てした業者のヘッジが主である。
人気離散でやせ細った取り組みとはいえ、
辛抱強い思惑に支えられていたわけだ。
このとき、手亡が再起不能なまでに叩きのめされた。
そして小豆もジリ貧続き。
量的にはまとまらなくとも、
産地からは定期の二~三百円下で売り物…。
うっせきした状態が長く続くと一体どうなるか。
今回の小豆暴落も決して材料があっての崩れではない。
いうなれば未練玉に〝離縁状〟を叩きつける決断が
ようやくついたに過ぎないのだ。
おりしも、道農務部は五十年観測として
「小豆の作付け面積は伸び悩むも生産はほぼ横ばい」と発表。
これまで北農中央会あたり二万ヘクタール減と
盛んに宣伝していただけに、
狐につままれたような妙な気分になる。
亀裂が入った相場の末路は明らかだ。
ときには利食いの買い戻しで反発するが、
戻りの力が鈍いといっては売り直され、
一万七千円の〝カサ〟が叫ばれては水準を落としていく。
頼みは日柄であるが、まだまだ長い道のりである。
ミシガン・ピーの市況が崩れて大下げした手亡だが、
一三㌦台(百ポンド当たり)に回復しても無反応である。
これも基調にヒビが入っているからだ。
相場とはそうしたものである。
●編集部注
当時流行った「昭和枯れすゝき」が似合う展開。
話は変わり、先日石原慎太郎が百条委員会で証言していたが、
この年のこの月、彼は衆議院議員を辞めて都知事選に立候補。
現職に惜敗している。