昭和の風林史(昭和四九年十二月十六日掲載分)
年内無相場か 暗澹とした年末
明日の農林省発表で大きく売られれば
よい買い場になるのだが、どれだけ下げるか。
下値も乏しい。
昨日から年賀郵便の特別取り扱いが始まった。
明日は浅草観音年の市、奈良若宮おん祭、
十八日は納めの観音。
つぎからつきとせきたてられそうに
年の瀬の流れが早くなってゆく。
毎年、年賀葉書は売り出しと同時に売り切れ、
買うのに並んだり、ウラから局員に頼んで
わけてもらったりで手に入れるのに困るのだが、
今年はまだどこにでも売っている。
物の売れ行きの極端に悪い不況の年の暮れを
象徴しているようである。
デパートも派手に歳末商戦を繰りひろげていて
昨日の日曜あたりが、
おそらく歳暮売り出しのピークとなったことと思われるが、
どうも庶民の財布の紐は堅くシブい様子である。
ターミナルのデパートは弊店間際まで
帰る途中の買い物客で混雑しているが
都心部のデパートは営業時間を延長しても
夕方すぎるとガラガラの状態。
タクシーも値上げの影響をモロにかぶって
寒空にエンエンと客待ちの列をなしている。
去年の年末の暗さはネオンが消えた暗さであった。
今年の暗さは不景気による暗さである。
あれほど天井しらずに高騰しつづけた外糖相場も
僅かな間に上げ幅の三分の一押しとなり、
ロイター商品指数も今年の最低値にまで沈下してしまった。
世界的に去年の狂乱インフレのトガメ、反動が顕著になり、
商品相場も全く元気がなくなった。
あに穀物のみならんやである。
その穀物相場だが、小豆は東京山梨商事の現物を
背景とした売り物増で前週はジリ安を続け、
十四日には全限新安値に転落、
手亡もウインターピースなどの年末換金売り相場から、
これもほとんど新安値をつける始末である。
もし明日予想以上の増収が発表されれば
買い方は完全にトドメを刺されることになる。
むしろこの発表で大きく突っ込む場面があれば
絶好の買い場となるのだが、
案外下値も乏しいのではないか。
それだけにあつかいにくい今年の相場である。
証券界でも年内無相場観が強まっている。
商品相場も見渡したところ
年末までに活躍しそうな銘柄は見あたらない。
越すに越されぬ年末を、なんとか越して
来年に期待をつないだ方が賢明なようである。
●編集部註
タクシー料金はこの年の一月に一七〇円から二二〇円に。
更に十一月には二八〇円と一年で二度値上がりしている。
【昭和四九年十二月十四日小豆五月限
一万六四九〇円・一八〇円安
/東京一万六五一〇円・二〇〇円安】