「武蔵野の青空青なる落葉かな」 秋桜子 (2016.11.18)
昭和の風林史(昭和四九年十一月十九日掲載分)
惨澹たる手亡 小豆相場を殺す
海外白系雑豆が手亡相場を殺す。
そしてそれが人気的に小豆相場に影響する。
陰の陰の現象。
「武蔵野の青空青なる落葉かな 秋桜子」
二連休のあとの穀物相場は、きまって崩れる。
秋闘の山場を明日に控えた18日は
手亡相場がカナダ産ピービーンズの日本向け輸出促進機運を
嫌気して崩れ、小豆も気味をそこねた。
穀物市場を見ていると、小豆にしろ、手亡にしろ、
相場としては大底値に達しているのであるが、
白系統の海外雑豆、ミシガン・ピービーンズなどの輸入成約が
相場をこわし手亡相場が、
まるで〝蟻地獄〟の蟻のような状態である。
それは昭和47年の中国小豆の輸入成約が、
小豆相場を殺したようなものである。
47年は中国大陸からの輸入だけではなく
台湾小豆、韓国小豆など、陸続と日本の市場に向かった。
思えば、昨年も三月にミシガン・ピービーンズの入船で
手亡相場は潰されている。
しかし、世界的な雑豆不足→価格高騰。
六月にはアメリカの大豆輸出停止など、
相場を支える材料と、
燃えるような投機熱が市場に充満していたため
七月に一万五千円の高値を付けた。
その後、手亡はきつい規制にしばられ、
また十月には、48年度下期雑豆輸入ワクで、
いんげんが拡大され暴落したが、
ピービーンズの輸出、石油危機による物不足懸念、
海外雑豆市況高騰という支援材料で
一万七千円台の越年となった。
今年に入って手亡相場は大発会値を天井に、
二月四日まで、およそ三千五百円を崩したが
五月16日一万三千円を軽く割ったあとは
一万九千五百円抜けまで爆走した。
このように手亡相場は大波乱を展開し、
国際性というか、海外事情によって価格の意外性を、
つぶさに見せてくれたのであるが、
いま、先限一万四千円の下値の限界と思われた抵抗帯を
あっけなく破られては、
五月16日の安値一万三千円割れ地点まで、
底抜けと見ざるを得ない。
この時、ホクレン30万俵タナ上げの小豆相場も
年末需要最盛期に向かうとはいえ、
穀物市場というひとつの池の中での手亡の波乱は、
少なからず小豆相場にも影響し、
クロウト、シロウトを問わず相場の迷いを深めるのである。
現実は、身をを切られる風のように冷たく、
そして厳しいものである。
●編集部註
先日、お客様から御座候を頂戴した。
二重焼、大判焼、色々呼び名はあるが御座候は回転焼だ。
ここの白餡は大手亡豆で出来ている。
その昔、この豆の価格を巡り
血で血を争う戦いが繰り広げられていたかと思うと、
実に感慨深い味だった。
【昭和四九年十一月十八日小豆四月限大阪一万六七四〇円・五三〇円安/東京一万六六六〇円・六四〇円安】