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森羅万象

「木の葉髪愚かに職にやつれおり」 康治 (2016.11.14)

昭和の風林史(昭和四九年十一月八日掲載分)
あとから響く タナ上げ 三十万俵
国鉄のスト。貨車繰り難。輸送遅れ。
年末の有りガスレというスケジュールで相場は強張ろう。
「木の葉髪愚かに職にやつれおり 康治」
ぼつぼつと小豆30万俵のタナ上げが
市場に響いてくる感じである。
30万俵をタナ上げしてしまうと、
今後の需給予測はおよそ次のようになる。
供給
古品繰り越し 八〇万俵
輸入小豆    六万俵
新穀小豆  一四五万俵
府県産小豆  二五万俵
輸入予想   一〇万俵
合計    二六六万俵
消費実績  二一〇万俵
差し引き   五六万俵
タナ上げ   三〇万俵
差し引き繰り越し予想
       二五万俵
期末適正在庫 三〇万俵
これは数字遊びである。
弱気する人は、本年産小豆の実収は
百四十五万俵を恐らく上回るだろうし、
消費は砂糖価格の高騰と、この不況によって
相当落ち込むだろうという見方をする。
しかし強気する側としては大納言小豆の二万六千円。
青えん二万円。大正金時一万七千五百円
という値段を見ても小豆の価格は安過ぎる。
また、来年の小豆の作付け面積は中間地帯が稲作に変わるから
(農家の採算として米をつくるほうがよほど有利)
全道小豆作付け面積は五万ヘクタールを割り込むだろう
という予想が今や常識である。
そして、世界的な異常気象は
今後ますます顕著になろうとしているし、
北海道は三年不作知らずで来ているだけに、
来年は非常に危険であるという考えがある。
そういう事から三十万俵ないし五十万万俵の
繰り越し在庫がなければ、来年の穀物取引所の立会いが
不安になってくるわけだ。
ここのところが同じ数字を眺めるにしても、
強気と弱気では大きく差が開いてくるのである。
眺めれば、株式市場も繊維市場も、
相場という相場は、ほとんど大底を打っている。
底は打ったが、金融面、しみわたった不況感、
人々の気持ちの沈み、消極性、おりからの政治不安などで、
強烈な反騰は期待出来ない。
だが、小豆は食糧であり一年草の作物だ。
ホクレンのタナ上げは穀物市場にとって、言うなら
市場安定のための食料備蓄でもある。
年末の貨車繰り難などを思うと
相場高騰は充分に考えられるところだった。
●編集部註
 商品相場の醍醐味ともいう動き。
逆の視点では商品相場の恐ろしさを思い知る動きともいえる。
 ここからの相場は、
買い方も売り方もうんざりするような保合い相場が、
おおよそ半年間続く。
【昭和四九年十一月七日小豆四月限
大阪一万七六三〇円・三一〇円高/
東京一万七六三〇円・二六〇円高】