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森羅万象

「照葉して名もなき草のあはれなる」 風生 (2016.11.09)

昭和の風林史(昭和四九年十月三十一日掲載分)
未来の概念で 小豆を強気する
先物市場は必ずしも商品そのものの売買ではなく
未来の概念の売買である。
「照葉して名もなき草のあはれなる 風生」
NYタイムス紙が伝えたサウジアラビアが
近く石油価格を10%以内で引き下げられようというニュースは
近年にない朗報であった。
株式市場も商品市場も好感した。
石油なんていうものは、地下にあっては、
なんの値打ちもないもので、採掘してこそ価値が出る。
しかし幾ら価値があろうと売れなければ
値段を下げるしかない。
中東産油諸国が石油価格を
軒並み引き下げてくるかどうか大きな関心事である。
世の中、満つれば欠けるし、欠ければまた満つる。
悪い悪いの毛糸相場も、
陰の極に達したあとは陽転するしかない。
ときおろで小豆相場であるが、農林省筋でも、
今の小豆価格は安過ぎると言うぐらいである。
大納言小豆が二万五千円もしている時に
一万六千円の小豆は、生産者泣かせだ。
商品先物市場は、必ずしも商品そのものではなく
〝未来の概念〟の売買である。
だから小豆という商品の現在の需要供給も考慮はされるが、
それ以上に、無限大に発展する未来の概念が
そこでは売買されているのだ。
未来の概念の中にはホクレンのタナ上げ、
50年産の作付け大幅減少、今後ますます悪化する世界の気象。
食糧の国内自給等が含まれている。
また、総供給小豆二百七十万俵。
需要減退により供給過剰→価格低落という予測も
未来の概念の売買対象材料である。
ただ、われわれは、いまの相場が、
非常に悪い環境下にもかかわらず、
一定の価格圏を維持している事から、
経験的に、下げ予知がないと判断する。
しかも、市場内部要因は日柄七十余日にわたる整理と
値幅五千円(12月限)による整理が強要された結果の
現在の相場を凝視するのである。
売れなければ値を下げるのは資本主義経済の原型であるが、
値段を下げるわけにはいかないところまでくれば、
生産制限、大量タナ上げという方法で価格を維持するのが
現在の経済システムである。
小豆相場は、どのような角度から見ても明らかに二番底圏にある。
●編集部注
昭和五一年五月、
芥川賞作家中上健次による短編集「蛇淫」が発表される。
同年十月二三日、この表題作が
長谷川和彦監督、水谷豊主演で「青春の殺人者」という映画になる。
そしてこの物語は、
昭和四九年十月三十日に千葉県市原市で発生した、
実の息子による両親殺人がベースになっている。
【昭和四九年十月三十日小豆三月限大阪一万六二九〇円・三三〇円高/東京一万六四〇〇円・三〇〇円高】