証券ビュー

森羅万象

呼び出し相場 座り直す (2016.10.12)

昭和の風林史(昭和四九年十月三日掲載分)  
呼び出し相場 三月限一万八千円
三月限の一万八千円までは一本道。
新穀の呼び出し相場である。
踏めば九千円も充分あり得る。
「しろしろと花びらそりぬ月の菊 久女」
さて、と座り直す。
大底を打った相場の典型的な動きを、まざまざと見た。
キッカケは、木綿針がタタミの上に落ちた音に
驚いたようなものだった。

ベビーライマの契約数量が二千㌧、三千㌧から
しまいには六千㌧まで言われる市場だった。
相場が言わせたのである。
しかし値ごろの抵抗線に来ていたし、
実際のところ二千㌧までの契約だった。

風の強い街、シカゴは寒波に見舞われ
畠に残っていたピービーンズの三割ぐらいが
雪と霜の被害を受け、
相場は四五〇㌦から六〇〇㌦を上回る急騰を演じた。
シカゴ市場は大豆も沸騰して投機家の目が血走った。

一日の夕方から夜にかけての雨がきつかった日本の
穀物の投機家筋は、
手亡は三回ぐらいS高するだろうと予想していた。
悪役だった手亡がシカゴの寒波に刺激された。

小豆も、すでに大底を九月28日に叩いていた。

小豆について東京の目立つ買い方である山大障子の
関口営業部長に解説してもらおう。
彼は名文句を吐いた。
『謙虚な気持ちで謙虚な上値を
三月限の一万八千円あたりと見ています。
このあたりは、新穀の呼び出し相場でしょう』。
―小豆の10~12月の需給バランスは、
調べたところきわめて、
きゅうくつで有りガスレの状態です。

また、あの地獄の底のようなときでも
中間の一万三千八百円。
十勝の四千円は、鉄の底だった。

彼岸需要。これが意外に売れた。
当社の如き(山大商事)都内雑穀流通市場で
微々たる(大なる謙そん)存在のところにも
現物筋から買いの手が殺到した。
市中に現物が過剰滞貨しているように言われるが
現実は順調な末端の売れ行きで
年末供給力不安と言うありありとした兆が出ていた。

見れば11月限必着六千八百円。12月七千円。
一月七千四百円(二日10時現在)のザラバで、
定期よりいずれも千円も上の水準である。
産地から、どの程度の荷物が来るか。
とりあえず呼び出し相場の
三月限八千円は謙虚なる値段で、
それからの踏みあげは、
私たちの関知せざる世界といえましょう―と。

流れは変わった。

●編集部註
 昔から、何かと10月の相場はいろいろ言われる。

 実際荒れやすいというのはあるかもしれない。

 昭和四九年の十月は、
相場以外に後世に残る事象がいろいろと起きる。 
調べて見ると面白い。

【昭和四九年十月二日小豆三月限大阪一万六七四〇円・三五〇円高/東京一万六九〇〇円・四四〇円高】