「鹿垣や木曽も奥なる妻篭村 迷子」 (2016.10.05)
昭和の風林史(昭和四九年九月二八日掲載分)
相場大底打つ アニー銃をとれ
この月末、新ポが大底になるだろう。
破れた軍旗を高々と掲げん。
信ずるものは常に勝つ。銃をとれ。
「鹿垣や木曽も奥なる妻篭村 迷子」
月末最後の整理場面のように思える下げだった。
ピービーンズ安から手亡がS安。
小豆新穀の出来値安など、
暗い市場に嫌気投げを誘った。
売り方は、
市場で目立つ買い建て玉がぶん投げて、
そこでわれわれが売り玉の利食いを入れるまでは
相場に底が出来ないのだと豪語する。
買い方は、呻吟(しんぎん)している。
姿勢を低くして、いまに見ておれ俺だって―
と大反抗を胸の内に秘めるのであった。
なあに絵に書いた百六十一万俵じゃないか。
今、
軟風は競うて吹き荒れているが、
これも、もうちょっとの辛抱。
節棒で新値足14本。
七月26日から数えて、すでに下げの限界である。
例年九月から十二月までの小豆消費量は、
およそ五十万俵ないし六十万俵である。
新穀の出回り年内三割と見るか、
それともホクレンの出荷調整で
二割ちょっとに抑えるか。
消費地在庫と年内出回りの新穀を合計して、
前記九~十二月平均消費量を差し引けば、
市中の定期受け渡し用の品物は
カスレる事になりかねない。
ありガスレという現象だ。
定期を人気で、しかも安値で売り込めば、
市場内部要因面からだけでも
強烈反騰一万八千円相場出現の可能性はある。
しかも人手不足で新穀の出回りにハンディがつくし、
値が気に入らない生産者は、売り急ぎしないだろう。
そういう現象が、表面化して相場が急騰しだすのは
月末最後の整理を終えて、
新ポ三月限のサヤが買えない軟地合いを、
もう一度横目に眺めたあたりからだ。
まさしく陰の極限に来ている。
相場が大反騰に転ずれば
百六十一万俵を
絵に書いた現実性のない数字であったという事を
意識して、騰勢をさらに熱気を持たん。
戦陣訓の歌に
「情に厚きますらをも正しき剣とる時は
千万人も辞するなし
信ずる者は常に勝ち皇師に向う敵あらじ」―と。
買い方は、最も苦しいところである。
千丁崩しは怖くはないが、
五文、十文安が寿命にひびく。
だがもう大底だ。
●編集部註
恐らく、罫線的には
四月頭につけた安値との面あわせという意識が
この文章を執筆時、脳裏に浮かんでいたのではないか。
思い描く上昇波動は、4月から7月への流れ。
しかし相場は、予想通りには進展しない。
【昭和四九年九月二七日小豆二月限
大阪一万五六八〇円・三二〇円安/
東京一万五七〇〇円・三九〇円安】