証券ビュー

森羅万象

「秋日濃しここも貫く新道路」 汀女  (2016.09.07)

昭和の風林史(昭和四九年九月二日掲載分)
値段はとどく あとは人気動向
台風の影響なしとなった月曜相場の
地合いが見どころ判断の急所。
下げなければ本物の底だ。
「秋日濃しここも貫く新道路 汀女」

九月の一日は二百十日。
今月の相場は二日が新ポで始まる。
そして二日は月齢望。
第一、第三土曜日を
休日にした商品業界は
今月二連休二ツがあるため
正味21日の実働となる。

さて、白露(8日)、二百二十日(11日)、
敬老の日、彼岸入り(20日)、十五夜(30日)
と短い秋の日が、
またたく間に過ぎていく九月の相場。
去年は仲秋の名月に、
さしもの大下げ相場が底打ちしたことから
今年も長引いて彼岸底になるのではないか
と相場反騰を期待するむきも多い。

週末の話題は東京丸の内の爆弾騒ぎと
二ツの台風の進路、
そして株式相場の強烈反騰だった。

小豆のほうは
今期雑豆輸入ワク三百七十八万㌦が
月初め早々発券となり、約一万㌧。
俵にして十七万俵の圧迫が
相場にのしかかるだろう
という懸念で相場の足を引っ張った。

四国方面に上陸するだろう
という16号台風も、
月曜には日本海に抜けて
北海道の豆作に
影響したか、しないかが判ろう。

相場はそのため模様眺めに終わった。

しかし、下に放れて
ダンゴになった日足線五本は下げ止まり型。
反発含みと見られる。

今回の一連の相場崩れをふり返ると
八月8日立秋急騰半値戻し頭を
山梨筋ドテン売り。
株式、他商品相場全面安。
作柄回復百四十五万俵収穫予想。
板崎・栗田両氏の大量投げ。
14号台風本土上陸後熱低となる。
雑豆輸入大型発券予想。
マバラ買い方の投げ。
納会で山梨大量渡し―。

この間、
およそ二千五百円幅を下げたのである。
市場人気は急速に冷え込んだ。
見渡せば君もあなたも皆戻り売り。
あと、ここから千丁という人気。
趨勢すでに相場天井せりという空気だ。

月末、八月決算の中井繊維が
九月限、十月限各五百枚を第一、乙部、山三で
付け替えしたのが目立った。
〝中井さんはいいな、中井さんはいいな―〟
という歌がある。
二千丁引かされた。
預けてある玉千枚分を節税対策で損切りして、
あらためて新年度に
コスト安の玉を帳面に記入する。

今期儲かりすぎたための大掃除をゆうゆうとやっていた。

●編集部注
相場も不穏、天候も不穏、社会もまた不穏。

この頃阿蘇山が噴火している。
東京丸の内では左翼ゲリラによる無差別爆破テロが発生。
無辜の市民が巻き添えを食らう。

【昭和四九年八月三一日小豆一月限大阪一万七〇三〇円・一六〇円安/東京一万七〇五〇円・七〇円安】

昭和の風林史(昭和四九年八月三一日掲載分)
2016年09月06日

急騰充分可能 下値にとどいた

市場人気は、まだ下値を言うが、小豆、手亡の七千円は、とどいていると思う。急反発も可能だ。

「消息のつたはしりごと一葉 夜半」

市場は相場の暴落によって小豆の平年作気分が支配している。しかし北海道から送られてくる作況データは甘楽寿司も楽観できるものではない。

十勝農試八月20日調べによれば小豆の草丈、本葉数は平年並みだが分枝数きわめて少なく、着莢数も著しく少ないという。

また、これからは台風シーズンである。

北海道の台風被害は台風が北海道の西岸を通過する夏台風は風の被害が出る。しかしこれからの秋台風は北海道の南側を通りやすく本道付近は前線が停滞しやすいため、これを刺激して雨の被害が出る。

秋の雨は手亡に被害を与える。長雨で色流れ、品質低下、大幅減収、三等品中心となった年もある。

市場は納会後の月末で閑散としている。

ここからは、値ごろの抵抗もあるし、本土に接近中の台風の進路も考えなければならない。

投げるだけ投げ、売るだけ売ったあとには現実だけが残る。

筆者は、いまの小豆相場が一万八千円台に回復することは、至難のわざだとは思わない。

人気としては、一万六千円割れ→一万五千円台の相場が言われるけれど、すでに一万七千円ラインが頑強であることを相場は知らしめている。

日足線のそれぞれが陰線とはいえ、その一本一本と、放れてからの〝たくしあげ〟の姿は、明らかに下値にとどいている格好でなんとしても目先、瀬年幅の急反騰は必至の情勢と判断するのである。

ここでサヤ関係も新穀と旧穀。小豆と手亡等、七月下旬ごろに比較して、かなり詰まっている。

下げ止まりは実勢に裏うちされている期近限月から顕著にあらわれ、それが人気に左右されやすい先限に影響しつつある。

手亡の相場にしても最大の難所〝秋の長雨〟時期を前にして、27、28日に叩いた値段は大底型で、東京市場の高納会は今後の手亡相場の動向を暗示したものだと思う。

小豆新穀の一万七千円。手亡新穀も同じく一万七千円。どうやらこのあたりが落ち着いた相場になるのではなかろうか。

●編集部註
時は平成二十八年、東北から北海道にかけ猛威を振るった台風10号の報道を横目に、昭和四九年の文章を読むと感慨深い。農産品市場は天候問題があるから厄介な時がある。

【昭和四九年八月三十日小豆一月限大阪一万七一九〇円・一三〇円高/東京一万七一二〇円・七〇円高】