証券ビュー

森羅万象

「蜩や皆々同じ旅愁もち」 非文 (2016.08.31)

昭和の風林史(昭和四九年八月二十七日掲載分)
需要期を控え 下値に抵抗帯が
台風14号を気にした動きだったが
相場にはまだ立ち直る力が出来ていない。
しかし底値圏だった。
「蜩や皆々同じ旅愁もち 非文」
26日は朝の新聞なし。
テレビで台風14号浜名湖地方に上陸と知る。
北海道手亡相場十月限前場一節ストップ高。
小豆も各地の相場が上寄る。
多分に14号台風の
北海道地方に及ぼす影響を警戒す。
大阪地方雲低く曇天。東京地方雨止むと聞く。
二、三節小豆相場小甘し―。
日記ふうに書けばこうなる。

毎年のことだが台風が日本列島を横断すると、
日本海に抜けたあとのコースについて
穀物市場は強い関心を示す。
過去に幾つかの台風が北海道に上陸して
収穫前の穀物に被害を出したことがある。
思い出すのは昭和29年の九月26日、27日、
西日本→北陸→東北→北海道方面で
死者千三百六十一人を出した
〝洞爺丸台風〟がある。
昭和33年九月26・27日の〝狩野川台風〟も
近畿、中部、関東、東北、北海道に
大きな被害を出した。
また中京地区の人々が忘れる事の出来ない
〝伊勢湾台風〟は昭和34年九月26・27日で
四国、中国、近畿、中部、関東、
東北、北海道と日本列島を縦断して
大きな被害を出した。

こうして見ると
九月の26日・27日は悪魔の日である。
近年、台風は発生した順に数字でなん号―と呼ぶが、
占領軍が駐留していた時分は
アメリカ式に女性の名前が付けられた。
昭和25年(九月2日→4日)のジェーン台風は
北海道を綺麗に横切っている。
ボーイ・スカウトがロープ結びを
練習するような格好のコースを辿った14号台風が、
果たして北海道の小豆、手亡に影響するかどうか。
前場引けには
早くも朝寄り付きで買った分を値段は消えて、
北海道には関係ないという顔つきである。

見方によっては台風とは関係なく
相場に力がまだ出来ていない
という事かもしれない。
しかし台風の過ぎたあとの北海道の天候。
現時点の小豆収穫百四十五万俵予想が
今後減少こそすれ増大しない事。
また落葉病の今後の成り行きなど、
やはり収穫して俵(たわら)に入るまでは
勝負はつかない。

いずれにせよ、
急速な立ち直りを望む事は出来なくとも、
需要最盛期を控えて、
相場は下値に抵抗が出来つつあることを知る。

●編集部註
 買い方は戦々恐々、イライラも堆積する。
ならばやめれば良いのだが、
そうも行かないもので、つい夢を見てしまう。
イライラは更に溜まる。

【昭和四九年八月二六日小豆一万七六四〇円・一〇円安/東京一万七五八〇円・六〇円安】