昭和の風林史 (昭和四九年七月二十六日掲載分)
値ごろ観も強弱も作柄も必要のない小豆、手亡の相場だ。
手亡は押し目買い。小豆は強烈強気。
北海道誠和商品の手亡の買い建て玉が注目されている。
当初小豆を強気していたものを
手亡の証拠金が下がった時点で小豆から手亡に乗り換え、
あと利食いしては建て玉をふやしてきたものだ。
一人、二人という特定のお客ではなく、
数名の当たり屋さんらしい。
相場の世界では当たり屋につけ、
曲がり屋に向えといわれる。
北海道誠和の手亡の当たり屋さんは目標を二万三千円どころにおいている。
小豆との逆ザヤ二千円の時点まで強気一貫の方針だという。
大相場には時として英雄が出現する。
常識的な相場判断では英雄になれない。確固たる信念とそれを貫く強固たる意志が必要である。
手亡相場は増し証になったが、規制が強化されるにともない相場のスケールも大きくなってゆく。
いまからでも充分間にあう相場である。
それは市場の警戒心が非常に強いから総買いにならず取り組みがかたよらないからだ。
そして作柄は二―三分作といわれるまで悪い。海外雑豆市場も高騰を続けている。
今年の異常気象は隣りの韓国でも猛烈な暑さで氷を買うのに延々と行列を作り、コカコーラの売れ行きも凄いそうだ。また、最近ソ連は世界の食肉市場から肉類を大量に買いあげているそうで、ソ連国内の穀物と牧草に何らかの異常があったのではないかと商社筋では成り行きを注目している。
すでに国際商品は砂糖、ゴム、穀物など反騰に転じている。
巨大なオイルダラーの換物運動は日本の商品市場にも大きく影響をもたらすだろう。
ちがった動きとしては証券市場から商品市場に投機資金が流れこんでいる現象も無視できない。
そういう背景のもとに小豆相場はインフレにヘッジする換物の動きと、異常気象を思惑する膨大な投機資金が集中してますますスケールを大きくしようとしている。
小豆の二万三千円、手亡の二万五千円という大相場が展開されそうだ。
●編集部注
相場も荒れているが政治の世界も荒れている。
ウォーターゲート事件で米最高裁がニクソン大統領に引導を渡したという報道が日本に伝わったのは恐らくこの頃である。
今なら為替相場がえらい事になっていたであろう。昔の方が良かった時もある。
【昭和四九年七月二五日小豆十二月限大阪一万九七一〇円・二七〇円高/東京一万九八一〇円・四一〇円高】