「その中の噂の人といて涼し 汀女」 (2016.07.26)
昭和の風林史 (昭和四九年七月二十四日掲載分)
< 東京の空は秋のように爽やかだと
電話のついでに教えてくれた。
大阪も、この二、三日は初秋のように涼しい。
長期予報では今年は秋が早いという。
小豆相場は22日の東京市場で
富士商品が千枚ほど売ったのが目立った。
この売りに対して巧者筋が買い向かった。
富士の売りが市場の空気を破った感じで、弾みがついた。
相場としては結局二万円を付けるまでは考えることはない。
どちらかと言えば玄人筋は弱気である。
なぜ強気になれないのか。
それは相場を知りすぎているからである。
産地の在庫量、悪くないという作柄、
売れないという現物、買いついている大衆―。
そういうことが目につくし、
値ごろに、こだわりがついてまわる。
しかし革命には理論はない。
革命は必要か不必要かで成否を決めるもので、
そこには力の哲学しか存在しない。
二万円以上の価格が必要か、不必要かである。
今の小豆相場を弱くみようと思えば
幾らでも弱い材料が並べられる。
要は自分のポジションである。
相場の強弱は、往々にして
売り建て玉なら弱気的見方に片寄るものだ。
筆者は、まだ誰も言わないが
府県産小豆も駄目だろうと思う。
東京の友人は土用丑の日(23日)大暑に
オフィスの冷房が不要なのだから
米も悪いし東北六県は不作決定的ですよと言う。
なるほど、冷房を切っている事務所が多い。
それに昨今気がつくことは
麦酒のおつまみに枝豆を取るが、
去年のように実が、はちきれそうなのがない。
どこの店の枝豆も情けないばかりだ。
ともかく、なんだかんだ言わず小豆の二万年。
そのあたりで軽く押して買い場をつくり
八月は燃える相場になるだろう。
九月二日新ポ。
八月中に二万二、三千円を付けた相場が九月天井。
この下げ三、四千丁と見ておけばよい。
そして再び現実の品不足で
来年一月まで大暴騰の凶作認識相場となろう。
過去、手亡を染めて小豆の代用にしていたことなど
人々は忘れている。
手亡高の影響も大きいし、
内地産小豆の不作も需給面では無視できない。
●編集部註
凶作に買いなし という。
この相場格言は〝知ったら仕舞い〟
という格言と恐らくセットになっていると思う。
【昭和四九年七月二三日小豆十二月限大阪一万九六〇〇円・七〇〇円高/東京一万九五八〇円・六六〇円高】