証券ビュー

森羅万象

あくまで冷静 反省するばかり (2016.07.11)

昭和の風林史 (昭和四九年七月九日掲載分) 
すぐ反省する相場である。実に冷静だ。
冷静で反省ばかりする人間は
面白くないのと同じだ。
「さからはず十楽をさへ茂らしむ 風生」
台風八号の産地におよぼす影響が注目された。
国鉄は東海道新幹線が不通になった。
新聞の長距離輸送の受付も停止されている。
選挙の関係で郵便物は大幅に停滞し、
郵送読者から新聞が届かないというお叱りを受ける。

それにしても日本の山河は
荒れほうだいに荒れているから、
ちょっとした豪雨で交通網はズダズタになる。

さて、相場は、
買ってはみたが、利食いが先行する。
結局は二万円おん小豆であるが、
規制強化と輸入発券を警戒しているから、
熱狂することはない。
遅れている作柄、なにかと不順気味な天候。
そして台風の影響。
なにをおいても買われてしかるべき相場である。

だが人々は、
輸入発券で深押ししたところを
買おうと待機している。
クロウトはまずこのあたりを買って、
下げたところを積極的に仕込もうという
二段構えの腹づもりはできているけれど、
大衆は値ごろ観で買いにくい。
そしてカラ売りするのは怖い。
専業取引員の営業も相場の水準が高いため、
自信を持って顧客に推奨しにくいという。

やはり毛糸、ゴム、乾繭のほうが
顧客受けするようだ。
天災期の天候相場でこれだけ天候が悪く
平年作は見込めないという作柄なのに、
小豆の期近限月、例えば七月限。
この限月の一台の値動きは
一万六千円を中心に上八百円、下八百円、
千六百円即ち一割幅しか動いていない。
Nの字とWの字を横に並べたような相場である。

在庫が豊富であるという圧迫。
需要が伸びないという重さが
旧穀限月の頭を抑えている。
その限りでは投機人気に火がつかない。
あくまでも需給本位の冷静な相場である。

前四本が、そういう状態であるから、
新穀二本も〝重り〟をつけられた格好で、
ともすればすぐに反省する。
反省ばかりしている人間は
間違いを起こす気づかいはないが、
面白味がない。
相場にしても反省ばかりして、
冷静なものは間違いはなかろうが、
面白さというか魅力がないものだ。

●編集部注
恐らく偶然だとは思うが、
この当時と現在とが符号していると感じる。
キーワードは政治的不穏。
この年の7月に米国最高裁は
ウォーターゲート事件でニクソンに引導を渡し、
翌月辞任する。

【昭和四九年七月八日小豆十二月限大阪一万八七七〇円・三三〇円安/東京一万八七一〇円・二六〇円安】