証券ビュー

森羅万象

天井するまで 買い一貫が秘訣  (2016.07.07)

昭和の風林史 (昭和四九年七月六日掲載分) 
目先嫌な気味だが崩れたところは小豆、
手亡とも新穀限月の買い場になろう。突っ込み買い。
「朝顔を見にしののめの人通り 万太郎」
 

畠を見なくても相場を見ておれば作柄は判るものだ。
黒板に記入される数字は需要供給、取り組み人気、
収穫予想に現在の作況、
そして産地の今の天気と明日の天候、
時には中国大陸の天候と農作物の作柄までが
織り込まれたりする。
だから相場は絶対であり神域である。
時に相場は過ちを犯す事もあるが、
直ちに過ちは訂正される。

たとえば〝見せかけの価格〟が
瞬間的にせよ付く時がある。
だが日本国中、万人が付いた相場を
見ているのであるから、
間違っていたら放置しておかない。
相場は情報の結集したものである
手亡相場が三千円幅を日足線19本。
上昇角度85度で騰げたことは、
手亡の収穫予想が絶望的数字になることを
万人が認めたからである。
それは、今の時点で、
この値段が妥当であるという意味である。
これが先に行って、
なお作柄が悪ければ価格は更に上昇するだろう。
去年のように作柄が豊作型なのに、
相場はズンズン上昇する事もある。
これは収穫材料以上に大きな材料(要因)が、
相場に影響したからである。

去年は過剰流動性資金が市場に流入した。
世界的な食糧不足という懸念と、
国内の諸物価高騰、投機熱充満
―によって価格構造が変化した。
しかし、結局は需給に勝る材料なしで
豊作相場が展開して大暴落した。
今年の相場は(小豆にしても)かなり高水準にある。
これは諸物価(米価との比較など)との釣り合いや、
生産と流通のコスト上昇、
そして現実の作柄の悪さと先行きの天候不安が
混然と絡みあって出来た値だ。

小豆が二万円を付けるであろう
―というのはあくまで予想だ。
今現在のあらゆる状況を
足したり引いたり割ったり掛けて、
まずこのあたりが妥当だろう
というのが新穀の一万九千円。
古品の一万六、七千円である。
いわゆる公正な価格だ。

相場をこのように考えてくると、
味も素っ気もなくなってくる。
相場はあまり考えないほうがよい。
いうところの信念を持って強気なら
強気で押し通す人が儲かる。

●編集部注
得体の知れない相場。
この月に日本で映画『エクソシスト』が公開される。
これに準えて相場を語る人が
少なくなかったのではないか。

【昭和四九年七月五日小豆十二月限大阪一万九一〇〇円・六〇円高/東京一万八九七〇円・二〇円安】