昭和の風林史(昭和四九年五月二十四日掲載分)
早くも全値戻しを目指す大勢。
天候が悪ければ儲けもの―式の強気勢力が台頭するところか。
「瓦煎餅反(そり)うつくしや楠公祭 青邨」
産地・北海道はこのところ好天に恵まれて
農作業もはかどっているという。
このペースでいくと、十勝地区でも
二十五日までに八〇~九〇%の播種を終えそうだ。
ところで相場の方だが、
東京市場で千枚近い早渡し希望が
出されたのを契機として反騰に転じている。
「これほどサヤがあれば格好の儲け口」と、
サヤ取りの受けも実に活発。
あっという間に
早渡し残は二百五十枚ほどに減ってしまった。
確か大阪もホクレンから
大量の早渡し希望が出されていたし、
長期早渡し制度を採用している市場だ。
サヤは東京以上にあるのだから、
もっとサヤ取り筋が動いて当然の話だが、
なにせ大阪は保証金が高い。
例えば、今月早受けして
割高水準の九月限へ早渡しをかけると、
大阪市場だと二五%、
それが東京市場だと八%で済む。
その違いが出ているだけで、
別に西市場に悪い代物が寄っているわけではない。
それにしてもこの「長期早渡し制度」、
当初は現物手持ち筋の救済
《つなぎが定期値上がりで踏まれるケースが多かった》
が目的のはず。
それが時移り風向きも随分と変わったものだ。
ある強気店では
『実弾が納会一本でぶっつけられると
影響も大きかっただろうが、
これで、早受け分については九
月限までカンヅメの形になり、
荷圧迫感も相当に軽減する』と。
これに対して、早受けといっても、しょせんはサヤ取り、
先へいって荷をかぶる〝自転車操業〟を
現在行っているに過ぎない。
幸い産地の天候もよく播種も順調に進んでいる。
もとより六、七月積みの手当て分も多い。
ここからさらに買い上げていけるかどうか甚だ疑問―
という見方もあるわけだ。
さてどういうことになるか。
天候へのウェイトが次第にますわけで
軽率な結論が出せないものの、
こういう考え方はどうだろう。
石油インフレですべての公共料金が上がる。
天候要素は今のところ五分と五分ながら、
生産資材の値上がり、労働費の急上昇で、
農家も素俵の一万五千円は最低欲しい。
つまり消費地の一万七千円は、
たとい平年作でも49年産小豆の最低線。
天候要因のプラスアルファを楽しむには、
強気思考により妙味がある。
●編集部註
その強気思考直後に急落するから意地悪だ。
【昭和四九年五月二三日小豆十月限大阪一万七二二〇円・一三〇円安/東京一万七二六〇円・一〇円高】