証券ビュー

森羅万象

終局現物投資 張付け天井後 (2016.04.19)

昭和の風林史(昭和四九年四月十五日掲載分) 
日本陸軍の切り札は抜刀隊の突入だったが、
本来小豆の最後の栄冠は
張り付け天井後の現物投機だ。
「金三日月飛騨の祭に光添ふ 美作」  

小豆相場は決め手難。
押し目が入ってよいところに来ているが、
三百円押し、五百円押しを待っている人が多いようだ。

押し目待ちに押し目なしで、
それでは先に上値があるのか?といえば、
一万七千五百円→八千円を
付けるだけの熱気も迫力もまだない。

理屈では、高かるべし。
高値出現必至の相場であるが、
時期的に、もう少しそれは先になりそうだ。

交通ストによる後遺症や、行楽、節句の需要。
あるいは東京都内の倉庫事情の悪さなど
材料としては買い方に味方するものが多いけれど、
まだ実感となって相場に直接はたらきかけない。

やはりそでは金詰まりという現実面からの
マイナス要因が、
相場を燃えたたさないのかもしれない。

では、先に行ってどうかという事だが、
まず賃金の上昇、電力料金の引き上げ、
国鉄運賃の値上げ等、
物価は再び上昇に転ずる事は見えている。

口では金融引き締めを続行すると
政府当局は現態勢を崩さぬ方針を強調するが
参院選挙ともなればやはり政治的配慮がされよう。

諸物価に比較して小豆の価格が高いか安いかは
これを生産する立場
あるいは投機思惑をする立場によって違うだろうが、
48年産小豆の反あたり生産コストは
一万九千円という数字が出ている。
今年はこれに35%アップと事情通は見ているから
反当たり二万五千六百円となる。

本年さん小豆は、生産費、運賃諸掛かり等を逆算して
仮りに平年昨二・四俵収穫でも
消費地一万八千円相場(農家手取り一万六千円)でうま味はない。
それが天候不順等で不作予想
反収一・六俵なら定期三万円相場でも
生産者にとっては面白くないわけだ。

まあ、そういう事は投機家の机上の計算としても
本年が不作なら、恐らく現物価格は史上最高値を付け、
定期市場は二万四、五千円で張り付けとなろう。

定期市場が上限価格をはめられた時こそ
現物手持ち筋の活躍場面だ。

幸いにして48年産小豆の品質は上々である。
本年の小豆相場は現物投資が
最後の栄冠を得るだろう。
だが今はまだ定期時代だ。

●編集部註
 今日の高値は明日の安値
という格言がある。

 買えない相場は強い

 儲かる相場は退屈で、
利が乗っている時ほど、
ついいらぬ悪手を仕掛け、自分を死地に追い込む

【昭和四九年四月十三日小豆九月限大阪一万七一四〇円・一二〇円高/東京一万七一五〇円・一八〇円高】