証券ビュー

森羅万象

前途洋々たり 安ければ仕込む (2016.04.12)

昭和の風林史(昭和四九年四月五日掲載分)
さあてと座りなおして回りを見渡すと、
居心地よさそうな相場の居所。
安ければ仕込んで判りやすく。

巧妙にカムフラージュしたつもりでも
世間の眼は容易に誤魔化せぬもの。
いや、相場に誤魔化しは通用しない。

高値の玉を抱えて、あと四、五百円も上がれば―と
いう向きは相当に多いが、
まるで懐ろを見透しているかのように、
あと少しのところで皮肉な表情を浮かべて相場は
回れ右をする。

千円戻しでほっと安堵した強気も、
相場の居所を改めてみると、
高値と安値の中間地点、倉庫はストだし、
十一~十二日は春闘のクライマックス(ゼネスト)、
〝花見相場〟に浮かれるのもほどほどに―
と気持ちを引き締め、
さあて、と座り直して相場の呼吸をうかがうところ。

先月に受け渡しされたヒネ小豆、
市中にいつ出回るかと見ていたら、
どことも『しばらく塩づけにしてますヨ。
全量クレームを申請し、
値引きになればそれだけ儲けもの』という。

市場が少しヒマになると話題になるのが仕手動向。

静岡筋はドテン売り転換しているよう。

いや、そんなことないでしょう。
中井さん、懐ろ玉の動きを見ていたら、
まだ相当に買い玉が残っていますよ。

桑名筋はどうですか。

あの人、根は強気ですよ。
先日の売りにしても、
叩いておいて安値を仕込みたいハラがうかがえるよ。

最近、本社ビルを新築した店も活発に
動いているようですが…。

どうなっているのか、むずかしくて、よく判りません。

京橋筋も〝ハナ〟を取りにいくあたり、
強気方針は不変―というところですか―。

人の噂であるから、どこまで信じてよいものやら。
案外マトをついているかも知れないし、
まるで見当外れかもしれない。

どっちでもよいというわけではないが、
大体、人の口の端にのぼることといえば、
まあ、いってみれば
顕微鏡下にうつる最近のうごめきに
注釈をつけている場合が多いものだ。

いずれにしても相場が
ひとにぎりの仕手の動きに振り回されるのは
のほほんのひとときに過ぎない。

仕手崩れの真最中はどこまで下がるのかと
背筋が凍るが、動揺がおさまって、
すぐに反騰に転じると、なんだァ―という寸法である。

相場の方は安いところを拾っておけば
将来が楽しめよう。

●編集部注
 これまで何度も書いてきた事だが、
相場様は意地悪できまぐれある。

 「押し目待ちに押し目なし」とは名言である。

【昭和四九年四月四日小豆九月限大阪一万六〇七〇円・一五〇円安/東京一万六〇三〇円・一五〇円安】