昭和の風林史(昭和四九年二月二六日掲載分)
海外商品の暴騰が必ず日本に大きく響き、
再び換物思想が津波のように押し寄せる。
「加太の海の波のり舟ぞ若布刈 左右」
名古屋米常の安田甫氏は今年に入って
小豆相場に関する限り実によくお見通しである。
大発会から弱く、二月四日で底入れと断定、
その後一万六千六百、七百円まで上伸する
―と強気を一貫
そして22日千枚以上の買い玉を利食いした。
これからの相場について安田祥雲斉氏は
『千円押しと見ている。
千円押し地点で買ってくるようなら、
もう少し下があるでしょう。
その場合は三月六日前後まで安いと見る。
方針としては大勢あくまで強気で、
千円押し以下の地点は再び買い場となろう。
次の上値目標は一月四日の高値挑戦である。
今年の北海道の天候は小豆に関しては平年作以下と思う。
静岡筋の小豆相場に対する取り組みかたは、
千円下げようと二千円下げようと
頑として強気一貫である。
納会では現物を受けたが
古品を手持ちしておけば
今年は必ず大きな利益をもたらす』―。
巧者筋は皆さん千円押しを予想している。
三、五百円の浅い押しぐらいで済む
―と当初は軽く考えていた。
それがここに来て千円押し。
しかし一様に押した後は大幅高と予測。
見ていると手亡が悪役になっている。
手亡相場が腐るにはそれだけのわけがある。
しかし、海外消費市場は
ロイター商品指数に見る如く暴騰している。
換物思想が再燃しているのだ。
ロンドン自由金価格がそれを表示している。
日本の国会は企業の利益追求行為に圧力をかけ、
選挙資金集めの〝なれあい〟
猿芝居をやってござる。
一時的な流行であるが、
気分的に頭を抑えられているようで面白くない。
しかし世界の商品相場を見ていると、
なにもかも高い。
日本の政府は三月いっぱい、
なんとか物価を抑えようとしているが、
四月解禁ともなれば、
諸物価は昨年末以上の値上がり率を示すだろう。
その時、小豆相場は一足早く上昇に転ずることは
火を見るよりも明からである。
人々が千円押しと見るならば、
五、七百円押し地点から買い下がるのが
相場の実践方法である。
先高を楽しみに、間違っても弱気をしてはならない。
●編集部注
戦後の悪性インフレに伴い
敗戦国通貨の信用は地に堕ちた。
ならばモノに換えておこうというのが
〝換物思想〟である。
【昭和四九年二月二五日小豆七月限大阪一万六四六〇円・一四〇円高/東京一万六三三〇円・三五〇円高】