昭和の風林史(昭和四九年一月二五日掲載分)
起死回生、
強烈ナンピンぶち込み戦法というのはどうだろう。
将来は高い運命にある小豆だ。
「水餅や笊の下なるこぼれ水 百川」
小豆相場は、いまここで下げておいたほうが、
あとの段取りがよい。
本年の北海道の天候は、決して楽観出来ない。
長期予報でも春が遅れそうだという。
大旱ばつになるかもしれない。
冷夏→冷害→凶作のパターンも本年は当てはまる。
小豆の大幅減反も予想出来るし、
機械化されている十勝地方の農家は
石油価格の高騰で小豆の生産コストは上がっている。
また二月、三月、四月に予想される全国的規模の
交通ゼネストによる輸送面の長期にわたる麻痺など。
このように先の事を考えると小豆相場は
予想外の波乱を展開するであろうと思われる。
そしていま、相場水準を低くしておく事により
将来予測される諸材料がいちいち現実のものとなった時、
その騰げ幅は期して待つものがあろう。
幸いにして消費地にも産地の在庫は豊富だ。
二万円前後ともなれば規制は強化されようが、
一万八千円という高い水準から買い上げるのと、
一万五千円、あるいは一万四千円台から
相場が蔓を伸ばすのとでは妙味が違う。
それには、いま高値で買いついている因果玉が
投げ終わってからで、相場とは常に意地悪く、
まるで人のポケットの中を知っているみたいに、
買い玉を辛抱しているあいだは落潮やまずに安く、
追証追証で、もうあかんと投げて
弱気一色の市場となった時分からやおら出直り、
今度は戻り売り、戻り売りで売られながら高い。
そうなるのではないかと思ったりする。
従って因果玉は出来るだけ早く投げるがよい。
ただしわが玉のみは
地獄の底の川床の砂に足の裏がとどくまで投げたくない。
人生でも相場でもぶくぶく沈んでいく最中は、
もがくほど悪い。
川床の砂に足の裏がとどいた時、
トーンと蹴れば、難なくスーッと浮かび上がるものである。
先に行けば面白い事が判っているのだから、
買い玉は、あらん限りの辛抱を続け、
追証で済むなら荷馬車に積んで運び込み、
川床に届いた時に強烈ナンピンをぶち込むという方法。
●編集部注
平成十四年二月に発行された鏑木繁著
「格言で学ぶ相場の哲学」(ダイヤモンド社)の8
7ページに以下の格言が載っている。
ナンピン(難平)商いスカンピン―。
氏は解説文の中で、ナンピンを
「相場の真髄からは逸脱している」と記述している。
【昭和四九年一月二四日小豆六月限大阪六月一万六〇〇〇円・三〇〇円高/東京一万五八五〇円・一四〇円高】