昭和の風林史(昭和四九年一月十四日掲載分)
下げようとしても
四囲の情勢が大きく下げさせない小豆である。
押し目買いでゆくところ。
「どんどの火あがれり星のふる空に 鴎村」
東京地方ではそうでもないらしいが、
西日本は今年は寒い冬をむかえている。
大阪では十二月の平均気温が前年に比べて
二度あまりも低かったとか。
それに十一月中ごろから雨らしい雨が降らず
頼りとする淀川の水位も下がる一方。
気候が変調なのはあいかわらず世界的で、
温暖なカリフォルニア州南部で大雪があったし、
昨年は干ばつで苦しんだオーストラリアでは
大雨で洪水がおきている。
とにかく年明け早々気になることが多い。
また十一日に日銀が発表した十二月の卸売物価指数は
一カ月で七・一%も暴騰した。
これは敗戦の混乱がまだ続いていた昭和二十三年九月の
八・二%につぐ数字というから、
いかに昨年末の経済動向が異常なものであったか、
改めて慄然とさせられるものがある。
さて今年になって、それも二~三日前から
原油の輸入も順調、このままでは灯油などの不足どころか
ダブつきそうだというニュースも流れて、
石油危機は作られたものでなかったか
という疑いも濃くなっている。
しかし原油の輸入が予定より多いとしても、
原油価格が昨年の今ごろの数倍になったのは事実。
その消費物資への跳ね返りが本格化するのはこれからだ。
各電力会社が大幅な値上げを申請することも確実だし、
ガスも、タクシーも
今までになかったような大幅値上げを行なう。
戦前はいざ知らず、戦後は物価は上がったら下がらない。
まして卸売物価がこれだけ暴騰すれば、
数カ月後には消費者物価が
どれぐらい上がるのかちょっと見当もつきにくい。
まして三月になると春闘がある。
今年はこうした経済情勢下だから
取る方も、取られる方も中途半端ではやめないだろう。
悪くすればゼネスト状態になる。
今でさえ悪い物資の流通品不足傾向は
一段と悪化する。
物はあるけど手に入らないということになる。
今年の穀物相場は世界的なインフレ高進、
それに数年前からの異常な気象情況という二つを
絶えず頭において考えなければならない。
現在の小豆の繰り越し量百五十万俵が
来年の今ごろでも必ずあるとはいえない。
当面は悪目、押し目を拾うのが有利であることは明白。
●編集部注
世界の市場価格は、
その3カ月後に
日本の末端価格に影響を与えると思っておいた方が良い―。
これは昔、筆者が
現物相場を中心に手掛ける人から聞いたアノマリーだが、
上記の喧騒を読むとなるほど説得力がある。
【昭和四九年一月十二日小豆六月限大阪一万七一九〇円・一八〇円高/東京一万七二四〇円・四〇円高】