昭和の風林史(昭和四九年一月十日掲載分)
一万八千円近い小豆が高いか、安いか。
それはやはり今年の天候次第。なんともいえない。
「かつぐ背に大判ゆるゝ福の笹 緑水」
七日正月も済んで、今日は十日戎。
大阪には今宮、堀川、野田など
各所に恵比須神社があって賑わい。
今年は不景気だというので
苦しいときの神頼みとばかり
例年にもました参拝客で混雑することだろう。
年が明けてさしもの物不足もインフレも
やや鎮静気味である。
年末にあれだけわれもわれもと買い溜めたあとであるから、
ちょっと食傷気味となるのも当然だろう。
年初からの商品相場が軟調に推移しているのは
こうした全般的なムードが影響しているらしい。
大衆筋も年末から大発会にかけて
腹一杯買ったあとだけに積極的には動けない。
ところで小豆相場だが、
八日に発表された四消費地市場の需給状況によると
出庫が十四万俵強と
最近数年間には見られなかったほどの好調であった。
これにコンテナ輸送などによる直送分を入れると
二十万俵近くにはなるだろう。
二年続きの大豊作年という背景のもとでは
この数字もかすんでしまっているが、
値ごろからみるとかなりの高水準といえよう。
このところ市中のスーパーへ行くと、
ビニールの小袋入りの小豆が
積みかさねられてあるのがいやに目につく。
これまえに押しやられていたものが、
バター、ラーメン、砂糖の品不足から
真中に堂々と進出してきたようだ。
その小豆の値段は三〇〇グラム入りで
大納言小豆一七五円、普通小豆で一三五円である。
六十キロに換算すると
それぞれ三万五千円、二万七千円と
ずいぶんの高値である。
目につくと買いたくなるのが消費者の心理である。
しかも去年から
なんでも買っておけば何か役に立つという気持ちが
消費者に強くなっているだけに、
小口でも割り合いよく売れているようだ。
こうした傾向はまだ当分続くと思われるから
一~二月は不需要期とはいいながらも
案外に好調な消費が継続するのではあるまいか。
それにやはり今年の天候の異常なのが気がかりだ。
すでに関東以西の太平洋岸地方は
ほとんど雨が降らず、
各地で観測史上の記録を更新している。
このため春野菜は総体に減収必至という。
それと小豆の収穫とを結びつけるのは
時期尚早といいながら
「薄氷を踏(ふ)んで堅氷に至る」の諺もあること。
油断はできない。
●編集部注
平成二八年。
コンビニで
ゆで小豆缶がすぐ手に入る。
むしろ国産の生の小豆を見つけ出す方が
逆に難しいかもしれない。
【昭和四八年一月九日小豆六月限大阪一万七三九〇円・一一〇円安/東京一万七三二〇円・一二〇円安】