昭和の風林史(昭和四八年十一月十六日掲載分)
世相混乱期に人々は
先物市場でマゾ的快楽に耽ろうとしている。
あるいは競馬に熱中する。
「単線の貨車の入れ替え草枯るる 恒明」
東京砂糖はストップ高してストップ安した。
まさしく末期的現象である。
小豆でもこのようなことをしたことがある。
株式市場も資源株買いで乱調子だ。
世相混乱、お金持ちはあせりの色が濃い。
現在は価値観が猫の目のように変わる。
使い捨て時代から節約時代。
米を作るなが食糧不足→米増産。
円高ドル安が円安ドル高。
輸出振興が輸出罪悪視。
それが再び輸出奨励時代。
車時代がノーカー時代。
品不足先高必至だった生糸、毛糸、
パニック相場が生糸、毛糸大暴落。
在庫豊富、豊作小豆が暴騰、暴騰。
ないはずのチリ紙が姿を消す。
自民党の若手議員の青嵐会は総理に食いつき、
野党各派は互いにののしり、
金詰まりのはずなのに夜の銀座の高級クラブは
満員の盛況。
史上最高のボーナス支給額五兆八千八百億円。
アンバランスの混乱は
破滅に向かって、その回転速度を
さらに早めようとしている。
こういうとき、一体なにを考え、
なにをすればよいのだろうか。
だから人々は
投機というマリファナの幻覚を求めて、
商品市場の先物相場でマゾ的快楽に耽る。
脇田米穀が千枚以上の売り玉を
〝ひと板〟で踏んだ(15日)のも、
いうならマゾ的手口である。
相場の様相はここ一年ほどで
確かに変態化してきた。
サディスチックだったりマゾ的だったりする。
こういう現象は
行くところまで行かないと止まるものではない。
異常繁殖したネズミの大群が、
ある日突然海に向かって
集団自殺をとげるようなものなのかもしれない。
すべてが異常なときだけに小豆の売り方が、
ある日突然強気に転換し、
強気グループが弱気に転換することもあり得よう。
売り方は長いあいだ売っていて苦労した。
この相場下がらんと、
考え方を急変するだけの要素と素地は充分にある。
しかし一方、買い方にすれば、
買って苦労してきている。
この相場、重たいと
考え方を急変するだけの要素も要因もあろう。
そこで弱気が強気に。
強気が弱気に立場を変える
即ちこれも幻影に踊らされたマリファナ現象だ。
●編集部注
高値切り上がり、
安値切り下がりの相場波動に
当時の小豆市場が動揺している様子が窺える。
全5波動のうち、
現在は上昇3波動目の渦中。
もう少しして、売り方が
あきらめきった所で下降4波動目が到来する。
【昭和四八年十一月十五日小豆四月限大阪一万五五八〇円・四八〇円高/東京一万五四八〇円・二八〇円高】