昭和の風林史(昭和四八年十月十七日掲載分)
手亡と小豆とはまったく異質のものだが
相場の人気という面では同一視されやすい。
「万葉の古道稲をかつぎけり 梅史」
中東戦争が長びくと、わが国も石油が不足する。
石油の配給統制などと言うと、
われわれは戦時中の木炭自動車を思い出す。
石油価格は必然的に高騰するだろう。
不必要に走っている乗用車が影をひそめれば、
かなりスッキリするかもしれない。
石油不足は自動車メーカーにも影響しようし、
土地不動産業者も無関係でない。
遠距離の住宅地から、もよりの私鉄の駅まで
マイカーで出てくる人も多い。
建て売り新興住宅はセントラルヒーティングの設備が
出来ているが石油不足でこれが充分に稼動できるだろうか?
とも思う。
ガス、電気、石油と大幅な値上げが続くと、
今年の冬が思いやられる。
渇水期の電力不足は今から予想出来る。
中東戦争を見ているとイスラエル側もアラブ側も
ミサイルの撃ち合いで戦車、飛行機の喪失が実に激しい。
まるでアメリカとソ連の武器の試射実験場のようである。
昔と違って今の兵器はきわめて精巧であるから
近代兵器による潰し合いは
武器の供給力と破壊量を計算すれば、
この戦争の限界も出てくるだろう。
中東戦争と小豆相場。直線的なつながりはない。
ただ世界的な穀物価格→ピービーンズ→大手亡→小豆
というような連想で手亡が上がれば
小豆も上がるということも、人気の面では考えられる。
今年の手亡は品質が悪い。
出回り二十五万五千俵のうち二、三等検が三五%。
四等検が二五%。等外四〇%の予想である。
生産者団体は五等検の設定を希望している。
五等検が設定されると
等外品の六三%に当たる六万四千俵が救済されるそうだ。
手亡の相場の欠点は人気がつかないことに
小豆と同じ値段なのに値幅制限が五百円というのも
手亡相場になじめない要因だ。
すぐにストップしてしまって、煎れや投げが出来ない。
また品物が少ないため規制がすぐに言われるのも
手亡の弱点である。
手亡が高いから小豆も高いという関連性は、
大したことではないのだが
付和雷同する人気の面から見ればそれも仕方がない。
●編集部註
中東戦争にかこつけて
商社が産品の買占めを行い始めるのがこの頃。
世情が不安になると、デマが横行する。
この年、11月には大阪でトイレットペーパー騒動が起こり、12月には豊川で信用金庫の取り付け騒動が起こっている。
【昭和四八年十月十六日小豆三月限大阪一万三二四〇円・三〇円安/東京一万三二一〇円・一三〇円高】