昭和の風林史(昭和四八年六月二十二日掲載分)
狙撃兵、あの戻りを撃て。
戻すことによって第二次崩落をまねくのだ。
抜刀隊、ラストタンゴだ。
「箸紙に誌す一句やところてん 応人」
高値圏の大きな〝しこり〟が、
ほどけてきた。
ツーウと黒い糸が垂れる。
先限の千円棒は、
典型的な三段型下がり型の天井をしているし、
およそ一万七千円どころから
一万八千円台にかけての
先限一代足のケイ線は、
売り線とは
こういうものだの集大成になっている。
『ほら、これとこれの組み合わせも売りよ。
これがそして三尊で、
電光足は肩すべり。
暴落線がここと、ここ。
日柄がこの地点から左右十五センチは、
どんな場合でも限界だ。
この幅の倍落としが
三倍落としでこの地点だね。
節(ふし)足新値六段もこうでしょう』
―などと弱気を垂れるには
またとない線型で、
ケイ線筋は戻り売り一貫という結論になる。
商いは閑なほうである。
買い方の巻き返し、
暁の逆襲を警戒する。
買い方は、
高値一万七千円高地に主力師団を、
ほとんどぶち込んだ。
従ってここのところゲリラ戦法で
窮地の主力師団を撤退させる事に賢明で、
新しい作戦、即ち二万円高地攻撃など、
とても出来ないし、
戦況また日一日と買い方不利。
制空権は売り方にある。
力を得た売り方は、戻りを売り狙う。
『狙撃兵あの戻りを撃て』。
『軽機前へ!!重機前へ!!』の指令も飛ぶ。
いずれ、着剣、抜刀隊突撃
―というわけで
一万五千円のラインまで
買い方は後退せざるを得ない。
〝ラストタンゴはパリで〟。
もう上映しているかと思ったが、
まだだった。
近日封切りお楽しみというわけだ。
〝アパッチの反乱〟。
〝空挺隊壊滅す〟
〝秘剣乱舞〟など
只今人気を呼んでいる。
見ていると、
〝進みすぎた時計〟が
〝狂いだした時計〟になった。
S安を目をつぶって買えば
日ばかり出来ると
柳の木の下ばかり狙っているが、
三匹も四匹も、どじょうはいない。
されば、リンゴの木の下で
あしたまた買いましょうという事になる。
波動は斜め肩下がり。
壁に張ったケイ線を眺むれば、
先限四千五百円か。
残念ながら貴君の売った地点には、
まだとどかない。
買い方も、売り方も、遥かなり、
わが仕掛け値は―と、手をかざす。
肩をたたいて
遥かな空を仰ぐ瞳に
雲が飛ぶ―
は麦と兵隊の歌。
●編集部注
風林火山は
シネマディクト
と呼ぶにふさわしい程の
映画好きであった。
72年公開
『ラストタンゴ・イン・パリ』の
日本公開は翌年六月二十三日。
本編を観ていたら
文中に加えていないだろう。
これは自滅する男の話だ。
【昭和四八年六月二一日小豆十一月限大阪一万六三二〇円・四六〇円高/東京一万六五七〇円・四九〇円高】