証券ビュー

森羅万象

弱気絶対無用 なんら心配なし (2015.04.01)

昭和の風林史(昭和四八年三月二十七日掲載分)

お客さまは、よう売ってきやはります
―という。
いずこも同じ人気の動向。
悪目は好買い場。
「山越の鴉こえなし花辛夷 波郷」
気の抜けたような閑な市場になった。

納会、月末、三月期の決算などの関係もあろう。
また増証、手亡の厳しい建て玉制限、
金融の引き締まりなども微妙に影響する。
しかし、大勢的には小豆相場の基調に、
なんら変化はないと見てよい。
熱狂していた人気が潮の引くように醒めた。
それは次々と打ち出された規制にもよるが、
日柄という面からの
サイクル、周波の波でもある。
緊急ワク三百二十万㌦の発券、
北京商談、交易会控えなどの材料を、
かなり織り込んだ相場には違いないが、
熱狂的に買い過ぎた相場が
反省期にはいったようなものである。
お酒の好きな人なら
たいがい経験している事だが、
つい呑みすぎて調子に乗って、
次の日は二日酔いで頭があがらない。
ゆうべの事を思うと
慙愧(ざんき)にたえない。
あれと似たような現象である。
しかし体質が変わったわけでないから、
夕暮れともなれば、
ちょっとだけきょうは慎重に
―ということになる。
そしてしばらくすると、
またお酒の上で失敗して後悔する。
この小豆相場だってつい調子が出てしまい、
ストップ高、ストップ高で買ったまでだ。
ただいま現在は
二日酔いで後悔しているような風情。
先限一万四千円割れは買い場になる。
なんといっても七、八月限は
天災期限月というエリート限月。
これに端境期の九月限と先三本揃えば、
来たる四月は
投機家好みの〝二日新ポ月〟。
彼岸に安値を求めて
安値を固めておけば彼岸底。
易の掲示板にぽつぽつ花だより。
〝花信しきり〟となれば、
見渡すと、いずこも同じ
〝お客さまはよう売ってきはります〟という。
売ってくるお客さまが
神様になるか鬼になるかは、
筆者の口からはなんとも言えないが、
安いところは買わなきゃ駄目だ。
残された相場は穀物ぐらいである。
砂糖もゴムもあるけれど、
投機妙味は小豆にまさるものはない。
各穀取とも、
ほどほどにバリケードを築いたあとだけに、
少しぐらいなら
相場が荒れたほうが張り合いがあろうというもの。
●編集部注
この数十行に、
相場難儀道の世界が満載である。
相場が、
思惑通りになる進展する事はまずない。
その思惑は心が揺らいで、
ポキリと折れた頃にやって来るものである。
【昭和四八年三月二六日小豆八月限大阪一万四四三〇円・一〇円安/東京一万四四九〇円・一四〇円高】