証券ビュー

森羅万象

昭和の風林史 (昭和四七年十一月二十一日掲載分) (2014.11.21)

高値買いつき      反落要因つくる

大衆筋の買い玉が回転して

上値で玉が広がり

そして押し目買い人気になったから

下げは急だろう。

「門あって又石段や笹鳴す 虚子」

今年で創業百年を迎えた須々庄は

数日来毎日の出来高が

同社始まって以来の新記録が続き、

土井社長も西沢専務も嬉しいようで、

半面怖いような気持ち。

西沢専務は、

九月に商いがあまりよく出来るので

十月は閑になるだろうと予想していたが、

十月も好調でへたすると

肝心の十一月に商い低下がくると心配していた。

ところが十一月は、さらによく出来る。

十二指腸潰瘍などと言っておれない。

お客さんに

小豆の強気方針をアドバイスしたのが成功して、

だから利食いしては買いで玉の回転が利く。

同社業績が創業来の最高記録という事は

創業百周年のなによりの御祝儀である。

神戸の藤岡藤蔵氏は

鈴屋商事が来年創業五十周年記念を迎えるに当たり、

この年の暮れに丸善商品を合併して、

通産、農林の了解も得て、スッキリと一本になる。

近ごろは藤岡氏の顔の相にも

昔のような、ふっくらとしたものが見え、

一時のあの険が消えている。

仕事がうまくいっている証拠である。

さて、小豆相場は、大衆筋が本当に強気になって、

むしろクロウト筋がクラクラしたところ。

安値を買って、棒立ちで利食い。

また買って利食い。玉をひろげたところ。

それで押してくれば、

大衆筋は当ててきているだけに

押し目買いでくるだろう。

それにしても少し商いが出来すぎるのが不安である。

輸入商社筋が煎れて、

だからことのような棒立ちとなったのだが、

いつの世でもまたどんな相場でも

高値を出せば品物が集まる。

時間的な差はあれど、みんなが強気になりきって、

押し目買い人気になれば現物の面でも、

取り組みの面からでも反落の要因が影をさすのだ。

これからの小豆相場を考える上において、

今回の相場を、もう一度分析してみる必要がある。

①出回り遅れ②安値売り込み③実需

④輸入商社の踏み⑤大衆筋の買い―。

出回り遅れは一万円相場で解消しようし、踏みは一巡した。

そして大衆の高値買いつき

という現象が目立つようになってきた。

短時間の棒立ちだけに

この反動は急落となってあらわれるであろう。

●編集部注
「須々庄」とは「須々木庄平商店」の事である。

須々木庄平氏は昭和十七年に亡くなっているが、

米相場華やかりし大正の堂島で

「三智識」ともてはやされたという。

【昭和四七年十一月二十日小豆四月限大阪一万〇〇二〇円・変わらず/東京九九八〇円・二〇円高】