証券ビュー

森羅万象

昭和の風林史(昭和四七年十一月七日掲載分) (2014.11.07)

一時的な硬直   すかさず売られ

小豆の九千円どころは非常に判りやすい売り場である。
手亡は拾うつもりで安値を待つ。

「浪浪のふるさとみちも初冬かな 蛇笏」

売っている間は下がらないもので、

買い戻すと、とたんに安いのが相場である。

まるで人のポケットの中身をお見通しである。

株式相場でも、やっと利食いできたと思うや、
とたんにスルスルと値段が伸びて、残念残念、
もう少し持っておけばよかったという事になるが、
持っているとさっぱり上がらない。

小豆相場が交易会で
八千㌧ないし一万㌧も契約出来たというのに崩れない
という事は
①北海道小豆の出回りが遅れている
②農家が売り渋る③人気的にやや売り込んだ―。

いうなら目先的な〝事象〟による小じっかり相場。
時間の経過に伴って、いずれ先に行って
北海道も売ってくる。輸入品もはいる。

相場観としては八千五百円以下は大底圏だから
買い下がっていけば、来春三、四月ごろには
①作付け面積の減少②未知数の天候を材料にする。
従って投機資金が小豆相場に介入してこようとの淡い期待がある。

だが、サヤがついている相場は、あまり期待するわけにはいかん。
需給面も過剰気味である。
九千円を買って、九千五百円なら
手ぐすね引いて売り場を狙っている産地が
ドッとヘッジするだろう。

いや、その前に輸入商社がすかさずヘッジする。
相場が高いという事はいい事であるが、
品物の薄い年ならいざ知らず、
およそ二百万俵の供給量がある時に、
理想買いは、一時的なものに終わろう。

小豆は売り上がっていけばよいのだ。

さて、手亡のほうだが、
手亡は安いところを買うのがコツで、
ピービーンズの成約ニュースなど
流れて下げたあたりを拾う。
手亡の相場は決して追いかけては取れない。

高値掴みになったり、安値売り込みになる。
玉がひっかかったり、もつれたりすると、
ほどくのに難儀するわけだ。

ともあれ十一月などという月は
アッという間に過ぎて、気がつくと
師走の風が足元を吹き抜けている。

年末一発勝負などと思っても、
その時分には、もう手遅れだ。

ここのところは九千円どころの小豆を
売っておくのが最も判りやすい方法だと思う。

●編集部注
相場は十月の抵抗を引け値で上抜けた。
これをダマシと見たのであろう。

【昭和四七年十一月六日小豆四月限大阪九二五〇円・三二〇円高/東京九二〇〇円・三九〇円高】