昭和の風林史 (昭和四七年十月二十六日掲載分) (2014.10.29)
反発しただけ 悪くなった小豆
相場が高くなれば契約が出来ることぐらい
判りきっている事だ。
八千二百円の小豆である。
「ものの情濃く薄く芝末枯れぬ 楸邨」
24日夕刻天津小豆
トン当たりFOB五百三十七元(99ポンド)の価格提示があり、
一ロット二百㌧で二社が四百㌧契約した。
そのほかの商社も25日中にそれぞれ契約に踏み切るようで、
十社ないし十五社、四千、ないし六千㌧が契約されよう
と伝えて前日買われた相場は急落した。
五百三十七元は公定レートだと91ポンドになるが
円切り上げを見越して99ポンドに換算しているのだそうだ。
高ければ契約が出来ることぐらい判りきっているのに、
相場がワッとくると、やはり飛び付く人が多かった。
小豆の線型としては、上の窓を埋めた格好で、
こうなると24日の高値を買った玉が重くなる。
八千五百円にあった抵抗も難なくはずれて、
八千二百円という水準に落ち込むことであろう。
おりからの新穀の出回り最盛期である。
小豆相場を強気するのは、まだまだ早いという事を
人々は、あらためて感じるのであった。
一方、手亡のほうはこれは小豆と違って、
取り組みそのものもベタに売られている。
小豆が下げても需給事情が違うので、手亡相場には影響しない。
手亡は高いところを買わず、
押し目を長期方針で強気すれば報われよう。
●編集部注
この日の紙面の都合もあってか、
短くあっさりした記述だが、
普段、ロジックが饒舌な分、記事が短いと逆に凄みがでる。
人事を尽くして天命を待つとまでは言わないが
「もう書くだけ書いた」という感も行間に滲む。
十月上旬の大陽線が目先の陽の極みであり、
この記事を書いている時は大陽線からの大陰線。
マド埋めも完了し、二十四日の高値は十月の二番天井。
トレンドは切り下がりとなってチャネルラインが見える。
その下限水準は八千二百円水準で、
そこには二つのマドが存在して…。
ざっとこのように書き足す事は出来るが
蛇足だ。野暮である。
相場用語の由来の多くが花柳界から来るように、
相場も記事も粋でなければならない。
以前風林火山が指摘していた〝ソーサーボトム〟は
ここに来てくっきりと浮かび上がっている。
もしこの時、テクニカルが大好きな外務員なら、
お客さんにどう勧めるだろうと夢想してみる。
半値押し水準を想定して買い推奨だろうか。
ソーサーボトムが変容して
変則的な逆三尊という見方も出来る。
トレンドラインも判りやすい。
長かった低迷期が間もなく終わろうとしている。
【昭和四七年十月二五日小豆三月限大阪八五六〇円・四二〇円安/東京八五八〇円・四〇〇円安】